光の在処
銀色の川

「宮城…?」
「高校はお父さんの母校で良いでしょ。お祖母ちゃんち近いし」
「…はい」

去年、一人暮らしの祖母が突然倒れた。
すぐに回復したが、やはり心配だという事で、4月から宮城にある父の実家で祖母と共に住む事になったのだという。
めったに家に帰って来ない父の実家には、幼い頃の数回しか行った事がない。
それなりに大きな日本家屋だったことと、毎回祖母がおはぎを作ってくれたことだけ、覚えている。

「母さん、向こうって私の部屋あるんだよね」

もうすぐ中学二年生に上がる妹が、コーラを飲みながら母に問い掛けた。
今の家では、私と妹の部屋は共同で、妹はそれが嫌らしい。
というか、『私と一緒』なのが嫌なのだろう。早く一人の部屋が欲しいとこぼしているのを何度か聞いたことがある。
母がもちろん、と答えると、妹は両手を上げて喜んだ。

「やったー!やっと亀とおさらばだ!」
「恋、」
「あっ…あー、宿題あるから!」

逃げる様に部屋を出た妹を見送り、ちらちらと此方に視線を向ける母から目をそらす。
ああ、そうだ、ご飯炊かなきゃ。
エプロンを身に付ける私を見て、私が話を聞いていなかったのだろうと判断したらしく、母はタバコに火を着けてソファーに掛ける。
それから此方を向いて、少し大きめの声でこう言った。

「明日の朝まで出掛けて来るから。恋のお弁当忘れないでよ」
「…はい」

今日の夕食は、どうしようかな。
炊飯器の釜を洗いながら、冷蔵庫の中身を思い浮べて瞼を閉じた。

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