光の在処
太陽に抱かれて眠る

ゴールデンウィークも過ぎ、新1年生達が高校生活に慣れてきた頃。

「ふあ…良く寝たぁ…」
「寝てたの…!?」

夢は、相澤真守というクラスメイトと仲良くなっていた。
真守は、名簿で言えば女子の一番初め、席で言えば夢の目の前に座る生徒だ。
真守が後ろを向いて夢に話し掛けたことから二人は話すようになり、仲良くなったというわけである。
ソフトボール部に入ったという彼女は、エネルギーを全て部活に注ぎ込んでいるらしく、授業中はよく居眠りしているらしい。
だが、一番前の席であるにも関わらず、居眠りがバレたことはない。
夢も目の前の背中が起きているのか眠っているのか判断出来ず、毎回後から聞いて驚いているのだが、どういうことか聞いても、真守はピースサインをするばかりで答えてくれないのだった。

「夢、机半分貸してー」
「どうぞ」

4限の授業が終わって昼休み。椅子の向きを変え、夢の机に弁当箱を置いて、真守は再びあくびをする。
目元を擦りながら片手で弁当の蓋を開ける真守に、夢は首を傾げた。

「…そんなに眠い?」
「眠いよー。朝早くから夜遅くまでキッツい練習してるもん…夢だって朝から夜まで練習してんでしょ?逆に何で平気なの?」

真守に問われ、夢は弁当の煮物をつつきながら視線を斜め上に上げて考える。

「…八時間寝てるから…?」
「八時間も?寝過ぎじゃないそれ?てか夜寝ても朝練したら眠くなるべ?」
「そうかな」
「夢ってどういうスケジュールで動いてんの?」

首を傾げる真守に、説明するべく夢は一日の行動を思い返した。
朝、起床は6時ちょっと前。二十分で朝食を取り、十分で支度する。6時半頃に家を出て、自転車で二十分かけて学校に到着。体育館を開け、7時から8時まで朝練を行う。
8時になったら練習を切り上げ、十分程度で着替えと片付けを済ませて教室へ。HRまでの時間で宿題を済ませ、授業。休み時間にまた宿題。
昼休みは二十分ほどで弁当を食べ、十五分ほど昼寝。余った時間はまた宿題や次の授業の支度。
放課後になったら部活へ行き、体育館を閉められるギリギリまで居残り練習をしてから帰る。大抵8時まで。
遅くても9時には帰宅。十分でシャワー、二十分で夕食を取り、食休みがてらストレッチや宿題をしてから10時頃就寝。
10時から6時まで寝るから、八時間寝ていることになる。というような内容を簡潔に説明すると、真守はうわ、と表情をひきつらせた。

「何その勉強と部活しかないスケジュール…しかもさりげなく昼寝が入ってるあたりなんか健康的なカンジ…」
「勉強と部活以外、何かやることってあったっけ…?」
「…そう言われると…よく考えたら、私も勉強の割合が少ないくらいで、対して変わらないかも」

ここで納得するあたり真守もだいぶ部活一筋なのだが、二人揃ってそのことには気付いていない。
話しながらも弁当を食べ終え、二人は両手を合わせて「ごちそうさまでした」と軽く頭を下げる。さっと弁当箱を片付け、時計を確認すると、夢は机の上をきれいにしてケータイを出した。

「じゃあ、私、15分まで寝るから…」
「私も寝る!時間なったら起こして!」
「うん。おやすみ」
「おやすー」

そして揃って机に突っ伏す。
時折、近くを通る生徒の視線を感じるが、気にするほどのものではないだろう、と、二人はそのまま目を閉じた。
――少しして。目を閉じてはいたものの、すぐには眠れず教室の音に耳をすませていた真守は、賑やかなざわめきの中に穏やかな寝息が混ざっているのに気が付き、バッと起き上がって振り向いた。
寝息の主は、真守の後ろの席で、机に伏した頭の上にタオルを被っている。
夢の肩がゆっくりと上下しているのを確認すると、真守は感心すると同時に、よくこんなうるさい教室で寝られるなあと思わず笑ってしまうのだった。



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高校時代のクラスメイトや弟を参考に組んだスケジュール
10分でお風呂入って20分でご飯食べるの凄いなって
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