光の在処
少年Aが隠した心臓

新入部員はほんの数人。
それでも、自分に後輩ができるというのはわくわくするものだ。
道宮結は練習着に着替えながら、隣でジャージに着替える後輩をちらりと見て、こっそり笑みを浮かべた。

「初島はタッパあるのに弱いから、しばらくはひたすらスパイクとブロックだねー」
「、はい」
「道宮、余裕あったら初島見てやって」
「はい!」

新入部員が入ってすぐ、道宮は三年から、一人の後輩の『教育係』を任された。
それって押し付けられただけじゃないの、と友人は言っていたし、自分でも少しそう思ったが、普通に考えて後輩の面倒を見るのは先輩なのだからおかしいことはない。…はず。
それに、伸びしろのある後輩を育てるなんて、なかなか燃える仕事じゃないか、と、道宮は思っていた。
――初島夢という後輩は、レシーブとトスは出来るのに、スパイクとブロックは全然ダメだ。
『壁』としてのみの役割すら期待出来ないほどダメダメだ。
プレーに、せっかくの高さが全く生かされていない。
サーブはまあまあ打てるのでこれは免除だが、WSやMBとして使うには相当鍛える必要がある。
ひとまず、ピンチサーバーとしてなら、まあ、使われる可能性もなくはないだろう、というのが、夢に関する今のところの見解だ。
今の夢では、それ以外で試合に出られるような力はない。

「うちは人数少ないし、上達したら一年でも試合出られるかもだから!特に初島はうちじゃ少ない高身長選手なんだし、根気よく頑張ろう!」
「はいっ」

それでも道宮は、夢が『弱い』選手だとは思っていなかったりする。
力は弱いし気も弱いけれど、まだ見えていない部分に何か『強いところ』があるんじゃないかと思うのだ。
高さではなく、もっと違うところに。

「朝練は来れる?」
「大丈夫です、けど、あの」
「ん?」

何故か、と聞かれると、今のところ答えられる理由は一つ。

「居残り、…部活のあとも残ったら、ダメですか」
「!」

この、おどおどとした態度とは裏腹の、貪欲な姿勢だ。
もしかしたら部の誰よりもやる気に満ちているかもしれない後輩に、道宮はいつも、心強さを感じずにはいられないのだ。



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やる気満々
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