たいようのかけら
君の手と紅葉の葉の関連性


今は亡き親友の子供を保護し、娘として我が家に迎え入れてから、二年が経った。

最初はぼうっとして黙ったまま動かず、まるで人形の様だった椋だが、少しずつ『人間』に近付いている。
話をする事を覚え、知る事を覚え、考える事を覚え、思う事を覚えた椋は、まるで好奇心の塊の様に色んな事を知りたがった。
成長する子供は、見ていて楽しいものだ。
最近では、わからない事があるとすぐ誰かに聞きに行き、突拍子もない疑問で周りを困らせていた。
何も知らない椋だからこその疑問と、その返答に困る周りの人間。そんな様子が、良く見られる様になっていた。


「にんげんは、どういう花がさくの?」
「はぁ?」

そして、今日もまた、椋は妙な事を言い出した。

「人間には花は咲かねぇなぁ」
「?じゃあ、どうするの?」
「何が?」
「くりかえし」

うむ、良くわからない。
なんとか細かく聞き出すと、つまり、椋が言いたいのはこういう事らしい。
『植物は花を咲かせ、実をならせ、種を落とし、枯れてもまた種から芽を出す。人間にはこれに該当するサイクルはないのか』。

「ねっこからふえるの?にんげんのねっこはどれ?」
「ああ、待て待て。人間に根はねぇよ。葉っぱもねぇし、花も咲かなければ、種も落とさない」
「…へんなの」

どうやら、植物ばかりに囲まれていた椋には、人間は不思議な物体に思えるらしい。
だが。

「お前もその『へんなの』だろうが」

まるで自分だけは違うとでも言いたげな台詞には、つっこまざるを得ない。
お前も人間だろう、と言うと、椋は目を丸くして固まってしまった。
しばらくしてから復活した椋に話を聞くと、自分を植物だと思い込んでいたらしいという事が発覚した。
本人の意識では人間ではなかったらしい。どうりで度々話が噛み合わなかったわけである。

「シカマルくん、わたし、にんげんなんだって!!」
「知ってる」

あんなに大変な事実を知ってしまったかの様な表情で『自分は人間だ』と言う奴は、きっと椋の他にはいないだろう。

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