たいようのかけら
未知との遭遇×2


ある日、親父が真剣な顔をして、俺と同い年の子供を連れてきた。

「今日から家族になる、霧桐椋ちゃんだ。仲良くしろよ」

色の薄い金髪を膝まで伸ばした、椋というらしいそいつは、驚く程表情がなくて、じっと動かなくて、何を言っても反応しない。
だから最初は、本当に生きている人間なのか、人形じゃないのか、と疑ってさえいた。

「おい」
「…」
「おまえ、しゃべれねーのか?」
「…」
「つーか、ことばわかってるか?」
「…」

話しかけても何の反応も無い。耳が聞こえないという可能性もある。
目の前で手を振っても反応は無い。が、目が見えないわけでは無さそうだった。
家に連れられて来た時、きょろきょろと周りを不思議そうに見ていたから、それは間違いない。

「へんじしろよ」
「…」
「おい、きーてんのか」

肩をつつくと、目を丸くしてこちらを見て固まった。
とても驚いているらしいのは何となくわかったが、何に驚いたのだろう。
もう一度、今度は頬をつついてみる。
それから、信じられないものでも見る様に俺を凝視する双眸を覗き込むと、椋は勢い良く立ち上がり、逃げてしまった。

「あ…」

走って、というには少し遅い早さで、裸足のまま庭に出て、木に登る椋。
ぎょっとして慌てて駆け寄るが、椋はするすると高い所まで行ってしまっていた。
ずっと上にある枝に座って俺を見下ろす椋の顔には表情が無くて、何を思っているのかさっぱりわからなかった。

prev*next
back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -