異星人7匹目


帰りのホームルームが終わり、皆が部活へ行く為に教室から出ていくのを見送りながら、ゆっくり鞄に道具を詰める。
部活――そうだ、部活。早めに決めるように言われているのだ。どうしようか。

「…はぁ」
「ため息つくと幸せ逃げんで」
「…まだいたんだ」

光が、机に座ってこちらを見ていた。部活行かないんだろうか。行儀悪いよ、と言うと、目を逸らされた。

「まだいたんだ、て。酷いな」
「部活行ったと思ってたし」
「今日は顧問が用事あるんで休みなんや」
「へぇ」

そんなんでいいのか。
適当だね、と言うと、今度はせやな、と同意。

「自分は」
「ん?」
「部活、どないすんの」
「まだ決めてないけど、今日は用事があるから、どこも見学しないで帰る」

今度は光がへぇ、と言った。鞄に荷物を詰め終わったので、手を止めて光を見る。
机に座っている光は、普通に椅子に座っている私より高い位置にいて、自然と見上げる格好になった。

「家、どの辺?」
「わかんないけど…歩いて30分くらいの所」
「道覚えたか?」
「まだ」
「…帰れるんかそれ」

馬鹿にした様な顔。確かに自信はない。だって今日初めて来たのだから。

「しばらく送ってくれる人がいるもん」
「へー、オカンとか?」
「ううん。母さんの再婚相手の人の弟さんも一緒に暮らす事になったから、その人」
「じゃあ、叔父か」
「そう」

名前は何て言ったっけ。新しい苗字が渡邊だから、渡邊…なんとかさん。まだ会った事はないけど、そのうち連絡が来るはず。

「その人、ここで先生してるんだって」
「…は?」
「時間になったら放送か何かで呼び出すって、母さん経由で伝言が」

光は目をまんまるにして、口を開けて驚いているらしい。今日1日を通して光はクールな人だってイメージがついていたから、その間の抜けた様な顔はちょっと面白い。
思わず小さく吹き出すと、拗ねた様な顔で睨まれた。

「…誰やろ。長嶺っちゅー教師はおらんかった気ぃすんねんけど」
「あ、私の苗字変わってないんだよ」
「ほな相手の苗字は?」
「渡邊さん」

光がえ、と漏らすのと、教室のスピーカーから音が鳴ったのは殆ど同時だった。
ぴんぽんぱんぽーん、と鳴った少し音の外れたそれは予想外に大音量で、驚いた私と光はびくっと肩を揺らす。

『2年7組長嶺菘ー、叔父さん生徒玄関トコおるから、のんびり来いやー』

本当に放送するとは思わなかった。
光を見ると、やっぱりびっくりした様で、信じられないものでも見る様な目でスピーカーを見つめていた。

「…呼ばれたみたいだ。私行くよ」

鞄を持って席を立つと、光も机から降りてついてくる。ドアに手をかけようとしたら先を越された。

「…俺も帰るし。玄関まで案内したるわ」

案内って。玄関くらい行け…いや、微妙かも。

「お願いします」
「反論せぇへんのかい」
「しようと思ったけど、一人で玄関行ける自信ないから」
「アホやん」

また馬鹿にされた。



back

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -