異星人6匹目


校内探検も終わり、教室に帰って机に突っ伏す。大きな学校だから、一通り回るだけで結構疲れた。

「…ここ、本当に中学校?」
「どういう意味や」
「建物が大きいし生徒数も多いし…」

これが都会…!と肩を落とすと、隣の光に鼻で笑われた。
何なんだよう。私の地元が田舎過ぎたっていうのか。…否定出来ないな。

「…人が多いよね。道を歩けば絶対誰かいるもんね」
「普通はおる」
「いなかったもん…地元には…」

小学校も何学年かは1クラスだし、かなり少子高齢化が進んでた。
そこからのこの大都会。
うん、色々ついていけない。主に学校のスケールとか方針とか。

「大体、皆大人っぽ過ぎるんだよ…メイクとか…学校にメイクとか…生徒指導は何をしているんだ…」
「普通やん」
「普通じゃない!ダメだよこんな若いうちから化粧なんかしたら…せっかく肌綺麗で可愛らしいのに老けて見えるよ…」

ぶちぶち言っていると、光は物珍しそうにこちらを見てきた。私は見世物じゃないよ、と言うと、見世物やろ、と返された。違うって。ニヤニヤして、何が面白いんだか。

「菘は化粧せーへんの?」
「いつ?」
「え、いつって…普段?」
「いや、普段する機会ないでしょ」
「は?」
「は?」

何やら話が噛み合ってないような気がする。
首を傾げると、光は丁度近くを通った女の子を捕まえて話し掛けた。

「なあ」
「えっ、ざ、財前君!?」
「普段化粧しとる?」
「もちろんしとるよ!」
「…ほら」

此方を見る光が何を言いたいのかさっぱりわからない。

「ほら、と言われても。結婚式に出席する時くらいしかしないでしょ?」
「普段や普段。学校とか休日とか」
「化粧して学校来たら先生に落とされるでしょ?ていうか内甲に響くよ」

あれ?何故か女の子まで目を見開いてる。何か変な事言ったかな。

「…ホンマか」
「す、少なくとも前の学校では…加えて言えば、ピアスとかアクセサリー系もアウトだった、けど…」

何故私が畏縮しなきやいけないんだろう。二人の視線が居たたまれない。
この無言は何だろう、と思っていたら、口を開いたのは光に声をかけられた女の子の方だった。

「ええー!?ありえんわ!!厳し過ぎるてそれ!!」
「っ!?」
「どないしたんー?」

少し離れた所から声がかかる。この女の子の友人だろうか。その大きな声に驚いているうちに、友人らしき子達が集まって来た。何これ。

「長嶺さんの前の学校、校則厳し過ぎんねん」
「えー、どんな感じなん?」
「メイクもアウト、アクセもアウト…後は?」
「えっ」

何だろう、前の学校基準でこの子達の違反な所を挙げればいいのかな。

「スカートは膝頭が隠れる所まで
ソックスは白か紺の無地もしくはワンポイントで長さはふくらはぎの一番太い所まで
肩につく長さの髪は結う
あまり高い位置で結うのはダメ
ゴムは飾りのないもので黒か茶か紺のみ
前髪は眉の所まで
それより長い場合はピンで止める
横髪はピンで止める
ピンは飾りのない黒か茶か紺のみでパッチンはダメ
髪染めるのはダメ
手首にシュシュを付けるとアクセサリーと同意なのでダメ
制服のインナーに派手な色合い・柄のある物は禁止

男子はワイシャツのボタンは第二ボタンまでしか開けてはいけない
ベルトは派手なものを使用してはいけない
サイズの合わない制服を着用してはいけない
髪型は襟足につくような長さはダメ
スキンヘッドも禁止

それと眉を剃るのは男女共にダメ
携帯電話や携帯ゲーム機等不要な電子機器の持ち込み禁止
飲食物の持ち込み禁止」

しーん。今度は教室全体が静まり返った。何故。まさか皆聞いてたのか。

「細かっ」

やっと口を開いたのは光だった。

「…自分、もしかして今もそれ守っとる?」
「うん。ここは携帯電話おっけーだったからこっち来るときに買ってもらったけど」
「道理でもっさいわけや…」

ああー、と教室全体から聞こえてきたのだが、自分のはかり知らぬ所で自分について納得されたのが解せない。どういう事なの。何に納得したんだ。
あともっさいって何だろう。

「四天宝寺はおもろいもんなら何でもありの学校や。規則なんてあってないよーなモンやし、もう少し…なぁ」
「なぁ、て言われてもわかんないんだけど…」
まだ会った初日なのに、そんな以心伝心出来ないって。
そう言うと、今度は皆してため息をついた。このクラス仲良いな。
ちょっと疎外感を感じた。

「…鼻メガネでもかけてくればいいのかな」
「いや、なんでやねん」
「面白い格好しろって事かなぁと…」

違うのか。

「だとしても鼻メガネて。チョイス古いわ!」
「え、そ、そう?」
「そーゆーんちゃうねん、こう、前の学校じゃ出来んかったような」
「可愛く!お洒落しようや、女子なんやから」

お洒落、前の学校で出来なかった、女子らしい事。って、何だろう。

「えー…あー…じゃあ…ポニーテールとか?」
「ポニテ禁止やったんか!?」
「ええな、やろ!」
「あ、ウチ櫛持ってるで」
「はい、鏡!」
「ウチがやったる!」

女子早いな。素早く囲まれてしまった。一人の女子が後ろに立って、私の髪を結っていたゴムを外したのがわかった。

「長嶺さん、髪長いなぁ」
「サラッサラやん、ええな、ウチなんて癖っ毛やから伸ばせへんねん」
「アンタの頭モップやもんな」
「モップ!?」

ちらっとその子の頭を見ると、まあ、確かにパーマっぽいかもしれない。個人的にはゆるいウェーブっぽくて良さげに見えるけど、と呟いたら、この騒がしい中でも聞こえていたらしく、両手を取られて「ホンマ!?」と顔を近付けられた。近い近い顔が近い。

「うん。ふわふわしてて、可愛いと思う」
「そんなん言われたん初めてや!」
「そうなの?」

首を傾げると、背後から「動かんといて!」と一喝された。
そういえば、髪の束が持ち上げられて頭が少し軽くなったような気がする。

「あ…言っておいてアレだけど、私ポニーテール似合わないと思う」
「遅いわ。もう結い終わるで」
「せっかくやし、そのビン底レンズのメガネ外そか」

ビン底か。厚いのは否定しないけど、そんな風に表現されるのは初めてだ。
小さく笑っていると、メガネを取られた。

「ほら、メガネ貸しーやー」
「あっ」
「…うわっ!度ぉきっつ!」

景色がぼやけて何も見えない。はい鏡、と渡されても見えないから意味がない。

「み、見えへん…メガネメガネ…」
「アンタはメガネ外しゃええやん」
「上からもう一個メガネ掛けたら丁度ええかと思て。メガネ・オン・メガネや」
「しょーもな」

私のメガネは女子の間にぐるぐると回されている様なので、隣の光に助けを求める事にした。

「光」
「何や。…お、メガネ外したら普通に女子やな」
「メガネの有無で性別変わるわけじゃないし、私は常に女子なんだけど」

光の顔もぼやけていたから、どんな表情をしているのかはわからなかった。

「特別可愛いとかはないな。普通や普通」
「がっかりしたみたいな声だね」
「美少女転校生とのラブコメは定番やんか」

何の定番なのだろうか。



**********

校則は隊長の出身中学参照。
他県の年下の知り合いに言ったらすごくびっくりされてこっちがびっくりしました。
あ、あれくらい普通じゃないんです…?
一個でも違反すると「高校行けないぞ」って先生が言ってたんだけど…違うの?と、今でも思ってます。はい。

ちなみにその中学の基準でいくと、テニプリキャラクターは基本的に全員校則違反です
あの手塚や真田でさえ前髪長いのでアウト!
違反者多すぎワロタ


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