異星人3匹目


「転校生来るらしいで!」


朝から話題はそれでもちきりだった。
やかましい同級生の会話を聞く気はなく、イヤホンを耳にさして音楽プレイヤーの再生ボタンを押した。
最近ダウンロードしたばかりの曲を聞きながら、先程の話題について考える。
転校生といえば、イケメンか美女が来て始まる恋…みたいなのが定番やろか。
恋愛ゲームや学園モノの漫画には転校生って必ずおるし。
しかしその分、転校生自身には変な期待とプレッシャーがかかっているのだろうけど。
どんまい転校生。
とか思っていたら気付いた。自分の席は一番後ろで、隣は誰もいないはずなのに、机と椅子がある。まさか。

「…ないわー」

よりにもよってここか。普通は1組とか端っこのクラスに行くもんやろ。何で7組なんて中途半端なところに入れるんや。
というかぶっちゃけ転校生にはお馴染みの質問責めっちゅーもんがあるはずで、隣の席なんか思い切り巻き込まれるやろ。はた迷惑な。
朝からテンション下がるわ。

「おーうお前ら、席つけやー!噂の転校生連れて来たったでー」

担任が来たので、音楽プレイヤーはイヤホンを巻き付けてポケットにねじ込む。
くそ、やっぱここなんか。
がたがたとクラスメートが席につくと、担任はドアの外に顔を出して軽く手招きした。

「ほな紹介するで。長嶺菘はんや」

入って来たのは女。知らん学校の制服を着たそいつは、担任の隣に立って深く礼をした。

「長嶺です、よろしく」

挨拶みじかっ。

「長嶺は青森から来たんやて。長旅ごくろーさん」
「いえ」
「席はあそこの黒髪ピアスの隣な」

もっとマシな説明ないんかい。転校生狼狽えとるやん。
しゃーないんで手を挙げると、転校生はほっとした様に此方へ歩いて来た。

「宜しくお願いします」
「ん」

そいつは丁寧に礼をして、新しい席に座った。
あー、質問責めの間どーするか。いっそ一限サボるか。

「財前、まだ長嶺の教科書届いてないねん。見したりや」
「うぃーっす」

あ、サボれんようなってもうた。



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