異星人9匹目


「ただいまー」
「ども、今日から世話んなりますー」
「おかえりー。オサム君、荷物は二階の部屋に置いといたからね」
「どーも」

新しい家。壁もドアも天井も綺麗。
階段を上がり、初めて与えられた『自分だけの部屋』に入ると、制服のまま新品のベッドにダイブした。
寝そべったまま部屋を見回すと、まだ開けていない段ボールが視界にうつった。あれの中身は確か本だ。本棚に移さなきゃ、と呟いて起き上がる。
ああ、しかしその前にまず着替えないといけない。
着替えて、本を片付けて、段ボールを処理して、宿題。
頭の中で順番を決めてから、制服のボタンに手をかけた。

着替えながら、ふと机に飾ってある写真立てに目が止まった。
幼い頃、姉と共に作ったそれ。歪な形をしているが、二人の名前が入ったそれは、実は姉と色違いでお揃いなのだ。
飾ってある写真には、小さい頃の二人が笑って写っている。確かあの写真を撮った次の年に両親が離婚したのだっけ。

姉は父に引き取られて、他県に引っ越してしまった。
その後、新たなパートナーを探す父が失恋をするたびに引っ越しを繰り返し、今は千葉にいるんだったか。
父に連れて行かれて以来、姉とは電話と手紙でしか連絡を取っていない。たまに写真を送ったりしているが、直接顔を見れないのは少し寂しいと思う。

「千葉…新幹線とかで、行げねぇべが…」

…馬鹿な事を。首を横に振って、小さく呟いた言葉を否定した。用もないのに会いに行くには少し遠い。
大体、姉は受験生なのだ。邪魔は出来ない。

「菘ー!」

下の階から聞こえた呼び声に思考を遮断された。

「買い物行くから、あんたも来なさい!」
「はーい!今行ぐ!」

脱いだ制服をハンガーにかけて、バッグを持って部屋を飛び出すと、玄関にはオサムさんによく似た、しかし髪の短い男の人がいた。
この人がきっと新しい父なのだろう、と想定した所で、背後からオサムさんの「おぉ、兄貴」という声が聞こえた。



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