花宮ちゃん乙女心は複雑なのよ(棒)

「今年は夏休みの始めと終わり、海と山で合宿2回よ!」

あ、これヤバいな。
一瞬で顔色が悪くなった同輩達の様子から、リコの笑顔の向こうに地獄へ続く扉の幻影を見た。

「合宿は主に予選及びこの前の練習試合で感じた弱点克服が目的よ。更に誠凛は少人数だから体力向上は不可欠、通常練習は今まで以上に走るわよ」
「夏休み明けたらWC予選はすぐそこだ!この夏休みをどこまで有効に使えるかが大事だ!気合入れていくぞ!!」

きっと、物凄くキツい夏休みになる。これは予想ではない。確信だ。
日向のあの何かを決意した様な表情が全てを語っている。
それでも、ずっとバスケをしていられるのだと考えた途端に楽しみに思えるのだから、私もすっかりバスケバカである。

「以上!解散!!」
「「「「っつかれしたぁ!」」」」



用具を片付けながら、言い合いを始めた黒子と火神を見る。
記憶にある『知識』の通りに進む時間は面白いが、淋しく思う事の方が多い。
自分と彼らの間に不可視の壁があるような、私はあくまでも『異物』なんだと言われている様な。
そんな、疎外感を感じてしまうのだ。…なんて。

「誠?どうした、ぼーっとして」

ぺし、と。頭の上に大きな手の平が乗せられて我に返る。

「…何でもないよ」
「そうかー?」
「おー」
「…怪しい」

全くこの男は、こういう時ばかり鋭い。
表情を覗き込もうとしてくる木吉の顔に手の平を叩きつけて押し返す。
何か言葉の様な事をもごもごと言いながら迫って来る木吉の顔面をぺしぺしと叩いてあしらっていると、体育館中央に立っていた日向が、仁王立ちで声を張り上げた。

「全員!もっかい!!集合ーーう!!」
「(よしっ…)さあ行こっかー」
「む…」

仕方ないか、とか次は絶対聞き出すからな、とかぶちぶちうるさい木吉の小言ともの言いたげな視線を黙殺し、集まる皆に紛れた。


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