花宮ちゃん天然は叩いても治らない

「あー、あとこれだけは言っとかねえとな。まあ創部した時から言ってたことなんだが」

復活した木吉が口を開くと、また全員が静かになった。
私も隣、というか斜め上の横顔を見上げて、真剣な表情をする木吉の言葉を待つ。

「なけなしの高校生活三年間を懸けるんだからな、やるからには本気だ」

木吉は、普通にしていればそれなりに貫録というか、人を導くような雰囲気がある。だから中学時代は主将として部員を引っ張っていたし、部員たちも木吉についていっていた。
カリスマ、というほどではないが、人の前に立つ素質はあるのだ、この男は。

「目標は勿論…どこだ!」

――この、ちょっとズレたところさえなければ。

「は?」
「いやIHの開催地ってどこだっけ?甲子園?」
「毎年変わるしもう負けたわ!!今目指してんのはWCだろ!」
「そうか!じゃあWCは今年はどこだ?」
「WCは毎年同じだよ!!東京だ!!」

きっと、野球部の『甲子園目指して頑張ろう』を真似したかったのだろう。
息を切らして怒鳴る様にツッコミを入れる日向と伊月に哀れみの視線を送りながら、もう何でも良いからまとめろ、と木吉の脇腹を突いた。
いちいちツッコミを入れるのが疲れるなら、もう喋らせなければ良いのだ。

「まあとにかく、山登るなら目指すのは当然頂点だ…が、景色もちゃんと楽しんでこーぜ」

そんな私達の心労を知らない木吉は、一年達に笑顔を振りまいていたのだが。


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