花宮ちゃん彼らのうわさ

「あいつらの復帰といい火神といい、しかも黒子もか。悩みは尽きねーなまったく…」

様子のおかしい火神に加え、黒子の調子も悪そうだった。伊月曰く『壁にぶち当たって』いるらしいが。
ルーキーコンビが揃って不調とは、笑えない。
ただでさえ、これから面倒なのが復帰して、大変になりそうだというのに。次々に現れる問題に、頭が痛くなりそうだ。
溜め息をついていると、先程からずっと何か言いたそうにしていた福田が、あの、と声を上げた。

「センパイ、『戻って来る』っていう人達…て、どんな人なんですか?」
「ん?あの二人?ああ」

そういえば、一年からしてみれば二人は全く未知の存在だ。突然チームメイトが二人も増える、しかもそれが両方先輩となれば、緊張したりするのだろう。
知っている俺からしたら、あいつら相手には、構えるだけ無駄だと思うのだが。

「一人は変人」
「え!?」

一言で表現すると、そうとしか言い様が無い。
が、やはりそれだけだと誤解を招きかねないので、まあ、フォローもしておくが。

「…でも恩人。オレをバスケに誘ってくれた奴でもある」
「ええ!?」

一年前の春。廊下でぶつかったのが全ての始まりだった。

「そして」

奴には一つ、肩書きがある。

「誠凛高校バスケ部を創った男だよ」

河原、福田、降旗の三人が目を丸くする。そうか、こいつらは、開校当時誠凛にバスケ部が無かった事も知らないのか。
ふと、思い出す。
存在しないのにバスケ部に入ろうとしていた天然ボケと、その相方みたいな目付きの悪い奴が、俺を巻き込んでバスケ部を創るだの入れだの入らないだのと騒いで。
なんやかんやで絆されたりムキになって反抗したりしながら仲間になるまでの、あの短くも濃い数日間の事は、今でも良く覚えている。
懐かしさに思わず遠い目をしていると、降旗が小さく挙手をしながら首を傾げた。

「じゃあ、もう一人は?」
「…そいつの相棒」

そっと目を伏せる。
バスケ部が出来る前の屋上や、夕陽に染まった白い部屋が、強く記憶に残っていた。
あいつは、何と言えばわかりやすいだろうか。百聞は一見に如かず、俺の説明を長々と聞くより、会ってしまった方がはっきりわかるのだが。
…肩書きを伝えるだけでいいか。

「…一応、表向きはマネージャーだな。カナリ優秀な奴だ」
「へえ!」

嘘は言ってない。


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