三度目の正直5月16日 その2
校庭の隅。
金属がぶつかる高い音が断続的に響き、砂ぼこりが戦う二人の足元を隠す。
綱吉は巻き込まれない様に距離を取りながら、頭を抱えてその場に崩れ落ちた。
――確かに、激しい戦闘が繰り広げられているけれど。
白弧さんが戦ってるけど!
「ワォ、君、何者?」
「2年A組白弧土睦だ」
「そういう事を聞いてるんじゃないよ」
「では何について問われたのか?」
「やけに戦い慣れてるけど、アメリカってそんなに治安悪いわけ?」
「(何で雲雀さんと戦ってんのー!?)」
土睦は両手に警棒のようなものを構え、トンファーを振り回す雲雀とぶつかり合っていた。
雲雀は楽しそうに口の端を吊り上げ、嬉々として土睦に殴りかかる。
土睦は真剣な表情でそれを受け止め、防御のみでなく時折攻撃にも転じていた。
しかしこれは、相当、かなり凄まじい戦いだが……獄寺はどうしたのだろうか。
リボーンは確かに、『獄寺に喧嘩を売らせた』と言っていたのに。
「獄寺ならあそこにいるぞ」
「えっ」
リボーンに言われた方角を見ると、少し離れた木の影に獄寺が座り込んでいるのが見えた。
どちらかの攻撃を受けたのか、腕や顔に擦り傷があり、また、腹の辺りを庇うように押さえている。
戦闘中の二人のとばっちりを食らわないよう気をつけつつ駆け寄ると、獄寺は綱吉を見るなりぱっと表情を明るくし、それから悔しそうに顔を顰めた。
「すんません10代目、白弧をここに呼び出したら偶然雲雀のヤローがいて……獲物を奪われちまいました」
「そ、それで……」
「アイツなにもんッスかね。雲雀相手に息一つ切らさねーでいやがる」
再び土睦と雲雀の戦いに視線を戻す。
土睦は双剣を扱うような動きで警棒を振るい、無傷で雲雀とやりあっている。
それがどれ程の強さを示すのか、雲雀と直接対決した事のある綱吉にはよくわかった。
何より、雲雀が笑っている時点で土睦の実力が相当のものだと認められたようなものである。
「俺の見立ては正しかったな」
隣の小さな家庭教師がニヤリと笑うのを見てしまい、綱吉はあちゃー、と右手で顔を覆った。
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