三度目の正直
すこしむかしのはなし


神というのは、世界の外側にいる存在である。
(世界の外側にいながらも、彼らは生涯に一つの世界にしか関わる事が出来ず、故に、その世界に住むニンゲンにちょっかいを出すのだ。)

けれど、わたしは生まれた時から世界の内側に縛り付けられている。
故に死後も、冥界へ行く事は出来ず。
内側に在るもの達と同じく、輪廻の渦に飲まれ、転生することになったのだ。


**********


その人を見付けた時、わたしは随喜のあまり叫びだしそうだった。

彼は記憶が無いらしかったが、ニンゲンだから仕方ない。
普通、世界の内側の存在は、転生の際の記憶消去に耐えるほどの力を持たないのだから。

けれど、魂のカタチやその本質は、何があろうと変わらない。
わたしが彼を見紛う筈が無いのだ。

その証拠に、彼はわたしを見るなり以前と変わらない赤いまなこを輝かせ、小さな身体でわたしを抱き上げると、まだ幼いかんばせを綻ばせてこう言った。

「おまえ、うちにくるか」

ええ、ええ、もちろんですとも。
是非とも連れて行ってくださいませ。
わたしは永劫あなたのもの。
あなたの為に生まれたのだから。

彼の細腕の中で見上げた空は、やはり満月の夜だった。

prevnext
back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -