三度目の正直
9月9日


勢い良く燃え盛る、炎の夢を見る。
――ぴとり。ぴとり。濡れたものがくっついては離れる音の繰り返しがうるさくて、わたしは目を覚ました。


**********


文字が掠れ、時刻表は剥げ落ち、金属のフレームも錆びている――そんな、今はもう使われていないらしいバス停を通り過ぎてすぐ。
黒曜センターの入り口、古びた門を前にして、細長い包みを背負い直した。
『気配』を感じてじくじく痛む首を擦り、門を閉ざす鍵を見つめる。このくらいの高さなら、わざわざ鍵を壊さなくても飛び越えて行けるだろう。
そうして数歩下がっていると、その前に『同行者』が行動を起こしていた。

「ポイズン・クッキング、溶解さくらもち」

ブショアア、と煙を上げて溶け落ちる南京錠。騒ぐ綱吉らを見て、山上由恵は一人、ため息をついた。
――綱吉らは、最近多発している、並盛中の生徒を狙った暴行事件の主犯を捕らえに行くのだと言う。六道骸、という男とその仲間が、この廃墟にいるらしい。
そういえば、学校でそんな話を聞いた気もする。確か、臨時の学校閉鎖の原因だったような……。
多くの生徒が病院送りになったそれは、綱吉を狙っての犯行なのだとか。顔を青ざめさせてびくびくする綱吉の隣で、一度襲われて負傷したという獄寺がリベンジに燃えて気合いを入れている。
主に赤ん坊からそれらの事情を聞かされた由恵は、成る程それで、と、旧道などという人気のない場所で綱吉らと出会ったことに納得した。
由恵が綱吉らに同行しているのは、偶然だ。一人で道を歩いていたところを、後ろから駆けて来た綱吉らに呼び止められ、共に来ることになったのだ。目的が同じで集まったわけではない。
由恵はここ数日、『夢』を見たわけでもないのに首が疼く日が続くので、その原因を探していた。近付くと首が痛む気配を追って、漸く見付けたのがここ、黒曜センターだったのだ。
綱吉らの話と合わせると、六道骸かその仲間が、由恵が追っている気配の主の可能性がある。なので、

「でも、山上さんはどうしてこんなところに……?やっぱり、雲雀さんみたいに一人で骸を倒しに……?」
「……(首の痛みが)不快だから、(原因と思われる気配を)潰そうと思って」
「(や、山上さんも骸のやってることに怒ってるんだ……)」

と、綱吉には少々暈した言い方で誤魔化した。『気配』や『夢』の話までする時間はないし、そもそも全て話す気もない。
このまま六道骸を倒しに来たと思わせて同行するのが得策だ、と判断したために、由恵は無言で、綱吉らと共に黒曜センターの敷地に足を踏み入れた。


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