三度目の正直
6月10日 その4


「復活(リ・ボーン)!!死ぬ気で喧嘩!!」
「!なっ!?」

勢い良く殴りかかって来る沢田先輩の拳を、右だけで受け止める。
じぃんと響いてくる衝撃の強さに顔を顰めつつ、左の棒を突き出すが、身体を反らして躱された。
何をしたのか知らないが、下着のみの姿になった瞬間に沢田先輩の気迫が変わった。
こう言うと変質者のようだが、本当に、迫力が出たのは制服を脱ぎ捨ててからなのだ。

「……本気で来てくれるなら何でも良いけどね!」

左に持つ短い方の棒を地面に投げ捨て、長い方を両手で構える。
勢い良く突っ込んでくる沢田先輩の拳をいなして躱して、タイミングを見て突きを入れる。
私のこれは槍術だから、『突き』と『薙ぎ』が主な攻撃だ。
が、今使っている得物がただの木の棒である為、『突き』の威力は半減している。
まあ、それでも急所に当たれば、それなりのダメージにはなるのだが。

「ぐっ!!」
「10代目!?」

突きが鳩尾に入り、沢田先輩は腹を押さえて私から距離を取る。
えずく沢田先輩に、獄寺先輩が心配そうな表情で叫んだ。
だが余裕は与えない。
退いた沢田先輩に此方から迫り、わき腹のあたりを薙いだ。
その勢いで沢田先輩は横に吹っ飛ぶ、

「……何!?」

――……筈、なのだが。
なんと沢田先輩は、しっかりと重心を落とし、私が振るった棒をわき腹に当てたまま捕まえていた。

「馬鹿な……今のを捉えたのか!?」

押しても引いても動かない棒に舌打ちをする。
沢田先輩にしっかり掴まれていて、全く動かせない。

「……!!しまった、」

『薙ぎ』の為に沢田先輩を追ったせいで、さっき放った短い方の棒から離れてしまっている。この距離では足で蹴る事も出来ない。
かといって取りに行く為にこの長い方を放すと、沢田先輩にリーチのある武器を与える事になってしまう。
……仕方ない、かくなる上は。

「(このまま迫って直接……!)」

棒から片手を離しながら、沢田先輩の懐に飛び込む。
顎を殴れば脳震盪を狙える。そうすれば立てなくなって私の勝ちだ。
私は両利きなので、どちらの手で殴っても威力に差は無い。
至近距離で拳を振りかぶり――……

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