があらちゃん僕の知らないある夜の話


「【――こいつが死ねば俺は自由の身だってのはわかってんだろ。て事ァ、俺をここに閉じ込めたのはこいつを殺す為かァ?】」

「!」

悍ましい気配と常とは違う口調に振り向くと、我愛羅の目元には先程まで無かった隈が浮かび、唇の両端が吊り上がっていた。

一瞬で汗が滲む。ざわり、と冷たいものが背中を撫でた。


これは。

この感覚は。


長年培ってきた経験による勘が、目の前にいるのが子供ではないと告げている。



「【めんどくせェ事すんなァ、人間ってのは本当にめんどくせェ】」

「貴様…守鶴!?何故『表』に…!!」

「【ん?ああ、こいつの提案をのんだ見返りよ。砂隠れの人間に手ェ出さねェ代わり、表に好きなだけ出られて、他の人間を殺し放題っつー、いわば契約だな】」

「何!?」

「【こいつは自分が兵器だと言っていたが…兵器ですら無かったみてェだなァ。シャハハハハ!哀れなガキだ!守ろうとしたものに排除されるたァなァ!】」


おかしくて仕方ないといった様子で笑い転げる子供――否、化け物に、手足が震えて動けない。

恐怖。
ただ、恐ろしい。
目の前に『死』を突き付けられている様な。

指先が震えて、刀を取り落した。


「【ま、こいつはそんな事、とっくの昔から知ってたがなァ】」

くつくつと喉を鳴らしながら去って行く我愛羅の、深く斬り付けたはずの背中は、しかし傷一つついてはいなかった。





***********
暗殺者さんは、我愛羅のおかげで命拾いしました。


そしてやっぱり守鶴の口調がわからんぬ。



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