逆トリって +

ある日主人公の女の子が近所の川岸を散歩していたら、川の中から外人男性が出てきた。

「!?」
「…どこだここ」

どうやら困っている様子だったので、濡れたままじゃあれでしょうしうちにどうぞって声をかけてみると、その人は少し考えてから頷いてついて来た。
場所はどこかの田舎。電車は一時間に一本あればいいほう、バスは1日五本くらい、街に出るには車で20分程度。山に囲まれた、里みたいな雰囲気の町。まあ電車通ってるだけ良いよね、みたいな。

「ただいまー」
「おかえりー」
「外人が川に落ちてたから連れてきたー」
「は?」

お母さんはポカーンとしつつも、サッチと名乗るその外人をお風呂に入らせて、お父さんの服を着せて、温かいお茶を差し出す。サッチは体格が良いのでお父さんの服がぱっつんぱっつんになり、主人公がお父さんのよりサイズの大きいメンズ服を貸してあげる。

「なんでこんな服持ってんの?」
「部屋着です。ぶかぶかが好きなので」
「わかるわかる、俺も(見るのが)好き」

変に意気投合。
しかしお兄さん日本語うまいねー。ニホンゴ?何それ。え、今喋ってるじゃない。へ?は?
といった具合に、お母さんとの会話でなんか話が噛み合わない事が発覚。遅い。
話し合った結果、「彼の言う事は良くわからないけど、行くところがないならしばらく保護してあげよう」という事に。優しいお母さんで良かったね!

しばらくして弟やらお父さんやら妹やらが帰って来て、その度に説明して、主人公が面倒になったため最終的にお父さんは「外人拾ったから」しか説明してもらえない。端折り過ぎである。(サッチはサッチで「グランドラインのなんか不思議な現象なんだろーな」って楽観視して楽しもうとしてて、細かい説明とか省くのでお父さんは余計にワケわからん。)でも歓迎してくれる優しさ。

ところで、主人公は準引きこもりな設定である。人が多いところは怖いので外で働けない。ので在宅バイトかなんかしてる。かといって全く外出しないってわけじゃないけど。
家族が出勤やら出校やらしてる間、主人公はサッチと一緒にエロゲやったりギャルゲやったり山で遊んだり川で遊んだりして仲良くなる。

サッチが来て数日経ったある日、主人公の弟が友達からワンピースの単行本を借りてくる。巻数多いので段ボールに詰めて持ってくる。で、弟が学校に行っている間に主人公とサッチが暇潰しに読んで、サッチが「ん?んん!?あれ!?」ってなる。
物語の世界だったのか…?って混乱して複雑な気持ちになるサッチ。
「…物語を書く人っていうのは」
「ん?」
「無意識で他の世界を観測して、それを記録しているんだっていう話があるんです」
「…」
「それに、人間が考える事は全て現実に起こり得るっていいますから」
「…だから?」
「つまり、そういう事です」

物語でなく観測記録なら、サッチの生きる世界も『現実』という事になる。っていう励まし方。それで少し元気出るサッチ。でも今度は自分の出番が少ない事に落ち込むオッサン。三コマって…三コマって…!
んでまた二人で読みながら、なんかこれ未来まで書いてあんなーってぽつりとサッチがこぼす。
「つーか俺殺されてんだけどー。ないわー。マジないわー。犯人こいつ友達なんだけどこれマジないわー」
「マジですか。私まだサッチさんのサの字も見てませんよ。サンジ君のサならたくさん出てますけど」
「どこまで読んだ?」
「今ルフィ君がアーロンをぶっ飛ばしました」
「遅っ!?」
そんな感じでゆるく過ごす。

帰る時は、川で遊んでてこけた主人公をサッチが庇おうとして、二人揃ってばっしゃーんってなって、水面に顔出したらそこはモビーディック号の近くでしたって感じ。
どうなってんだ?って二人で首を傾げてたらなんか主人公の下半身が魚になってて、お前人魚!?いえ人間だったはずですけど!!だよな!!って騒いでたらモビーの甲板にいた仲間が気付いてくれて引き上げられる。なんかよその海賊と交戦中だった。超あぶねぇ!そんな帰還。
主人公はそこまで帰りたがらない。サッチさんいるしなんか面白いものいっぱいあるし、帰れなくてもいっかー。て感じ。家族とか友達にもう会えないかもしれないのにか?って聞かれると、「まあ、人生に出会いと別れは付き物だから」って悟った様な返事を返す。適応力が高いようだ。

そのあとは人魚になっちゃった主人公を「俺が奪って来た宝だから」って言って保護する(というか囲う)サッチとか人がたくさんいるのを怖がる主人公を宥めるサッチとか単行本で得た情報を頼りに死亡フラグを回避するサッチとかナースの誰が一番かわいいかを真剣に主人公と討論するサッチとか。
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