妖精さん小ネタ +

※多分青雉視点
※会議直後なイメージ

「おいしくなかったです」

むす、と頬を膨らましてむくれる少女は、金色の翅をはばたかせて宙に立ち、その場にいる全員を見下ろす様にして言った。

「辛いし苦いし渋いしえぐいし、もう、何て表現したらいいのか、筆舌に尽くしがたい味でした。例えるなら、噂に聞く悪魔の実の味に近いと思います」
「うわぁ」
「それは…」
「きっついねェ〜…」

口角をひくつかせる能力者達。きっと各々悪魔の実を食べた時の事を思い出しているのだろう。あれは本当に不味かったものな…。あさっての方向を向いて遠い目をする俺達能力者を、非能力者達が同情を込めた目で見ていた。

「何なんですか。マリージョアといいここといい、海軍や政府関係者のことばは何でこんなにおいしくないんですか」
「いや、そう言われても…」
「見てくださいよ、最近おいしいことばを食べられてないせいで、翅が縮んできてしまってるんですよ」
(あの翅って縮むのか)
(縮むんだ…)
(初めて知った)
「これ以上私の健康が害される様なら、」

腰に手をあてて胸を張り、眉間にきゅっとしわを寄せて怒りをアピールしながら、少女ははっきり声高く宣言した。

「私、ドンキホーテ・ドフラミンゴさんの所に行きますから!」

がたっ、ごとり、ばさばさ、がちゃん。将校達が立ち上がったり椅子から落ちたり書類を落としたり湯飲みを割ったりした音である。
少女の爆弾発言に、良い歳をしたおっさん共が一気に慌てだした。

「待て、それはどういう事だ!」
「七武海を選んだのは良いが、何故よりによってドンキホーテ・ドフラミンゴなんだ!?」
「いや、七武海でも海賊は所詮海賊!ダメだ!」
「あの人のことばが、ここで会った人達の中で一番おいしかったので」
「「「「「何ィ!?」」」」」

殺気立つ数名の将校達。七武海の称号を剥奪するかとか何とかこそこそ話す彼らに気付いているのかいないのか、少女は真顔でさらに続ける。

「というか、考えてみたら味に善悪は関係ないわけですし、健康を考えたら、良い事をするために自分を律してばかりいる政府や海軍より、悪い事をしていても正直に楽しんでいる海賊達のことばの方が私の体には良いわけですよ」
「ええー…」

その通りなんだろうけど、腑に落ちない。
何とか引き止めようとおっさん共が肩を組んで会議を始めるのを尻目に、自分も何か策はないか考えながら茶を一口啜る。

どうにかして少女をここに留めさせ、且つ彼女にとって『おいしい』ことばを聞かせる方法はないだろうか。


「――せめて」

ふと、少女が呟いた。思考を一時停止して耳を欹てる。肩を組んで会議中のおっさん連中も、ぴたり、と話を止めて、少女の言葉の続きを待つ。
そんなこちらの様子には見向きもせず、少女ははあ、と溜息混じりに口を開いた。

「…居住区に行けば、子供達や家族連れの人達の会話があるんでしょうけれど、『石』がここにあるので私は行けないですし…」
「「「「「!!」」」」」



…後日、『依り代』を持って居住区の見回りを行うだけの仕事が回され始めた理由は、あの会議に出席していた者だけが知っている。

**********
ミポたんは寡黙だし、くまは無口だし、砂鰐も必要ない話はしなさそうだし、ハンコック様は会議来ないし、ジンベエは拒否しそうだし。モリアとドフラミンゴさんで迷ったんだけど、モリアは「優秀な部下を失いたくない」っていう恐怖みたいなものが常に根底にあるのかなって思ったのでドフラミンゴさんになりました。
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