赤髪のお頭と灼眼の魔女SS +


漁業で栄える小さな島に停泊して三日目の深夜。酒場に行った筈のお頭が、気のせいか、いつもより上機嫌な様子で帰って来た。まあそこまでは良かった。まだ、『いつも通り』の範囲だった。
その範囲を外れたのは、次の日からだ。当然の如く二日酔いでダウン、だと思っていたのに予想は外れ、まさかの朝から上機嫌で街に繰り出して行ったお頭には驚いた。船員達の間にも衝撃が走り、顎が外れているのではないかというくらいに口を開いて唖然とする者もいた程だ。天変地異の前触れか、と怯えるヤソップの頭を、ルゥが勢い良く叩いていた。
夕方になってもお頭は帰って来なかったが、その頃には船員達の『いつもと違うお頭』に対する恐怖も薄れて来ていた。
ところが。
夜になり、気にし過ぎだったな、なんて笑いながら酒を飲んでいた所に、お頭はまた上機嫌で帰って来た。

「ベーンちゃーん!」
「ああ、おかし…ら…」
「この子な、しばらく船に乗せるから!な!よろしく!」

女という名の問題を引き連れて。

「よろしくお願いしまーす!」
「しまーっす!がっはっはっは!」
「あははははは!」

顔が真っ赤な酔っ払い二人が、仲良く手を繋いで歩いて来るのを、船に残っていた船員達がぽかんと見つめている。がしゃん、ぱりん、と、誰かが落とした酒瓶の割れる音が響いた。
嫌な予感というものはどうしてこうも当たるのだろう、と、赤髪海賊団副船長ベン・ベックマンは、こめかみを押さえてため息をついた。
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