好きなものから変わった関係 

「みょうじ先輩が好きです…っ」
「……!?」


呼び出された放課後、人気の無い校舎裏。
自慢にならないが、基本的にテストは平均点、成績も悪くは無いけど特にいいわけでもない。

飯食った後の昼はやっぱり眠くなったりするし、他のやつとバカやったりする、普通すぎる、どう頑張っても(勉強は頑張りたくない)どこにでもいる男子高校生な俺だが、今、告白を受けているらしい。


「えっと…俺、であってるよね?」
「はい…みょうじ先輩です」


間違ってなかった…!

周りに人の気配もないし、罰ゲームという線もなさそうだ。

とりあえず、人間違いということはなさそうだったことに少し安心した。

それから、告白してくれた二つ結びの女の子は口を震わせ、何回か開けたり閉じたり動いていたので黙って待つ。

きっと想像もつかないくらい勇気を振り絞って告白しに来てくれたんだろう、その二つ結びの女の子の手はぎゅっと白くなるまで握られていて小刻みに震えている。

なんで俺なのかなんてわからないが、緊張しているのがよく分かる。
と、そこまで見てついに女の子は声を発した。


「先輩はお付き合いしてる人が今、いないと聞きました」
「…」
「よかったら付き合ってください…!」


髪を手で触りながら思う。俺だって男だし、そりゃあ告白をわりとかわいい感じの子にされれば嬉しい。

そりゃあ、告白されることだってそんなあるわけじゃないしな。

俺がフリーだったら「むしろこっちがお願いします」って言ってるだろう。

でも…頭の陰に猫目と色素の薄い髪の毛を持つ奴の姿が浮かぶ。


「悪い、付き合ってるやつがいるんだ」
「え…」
「あー…とこの間から付き合ってるんだ」
「そうなんですか…」
「うん、そいつのこと大切にしたいんだ」


ごめんねとそのあとこぼすように告げ、黙って彼女を見る。

彼女は少しの間黙った後、俯いていった。


「いえ、聞いていただいてありがとうございましたっ!」

言葉を震わせて、俺の前で泣くまいと耐えていたのか少し目のふちに涙がためながら言いきって彼女は背を向け走って去っていった。


「あーあ…」


こんな俺みたいなやつに告白してくれるなんていい子だったわ…。

俺の人生できっと最後なるかもしれない女の子からの告白を胸に収めた。

でも、告白されてんのにあいつ――出水の姿がちらついた時点で俺もだいぶ惚れてるみたいだ。









俺が出水と付き合いだしたのはそもそも出水の告白らしくない告白からだった。

あの時は確か、基本は出水・米屋と弁当を食べているのに、米屋のアホが授業中に居眠りしたことで先生に呼び出されて出水と二人で弁当を食べることになった時だった。


「米屋はほんとアホだな」
「槍バカだからな」


みたいな感じでいつも通りグダグダと世間話だったり最近あったことだったり話していて、たまたまその時に出水が嬉しそうにエビフライを箸で持っているのが目について、出水がエビフライが好きだったことを思い出して話を振った。


「そういや出水はエビフライが好きなんだったよな」
「ん…?ああ、好きだぜ」


エビフライをもぐもぐ食べきってそういった出水はしっかりごくんと飲み込んだ後に


「そういうお前はからあげ好きだったよな」
「おお…よく覚えてたな」
「でも俺さ、エビフライより好きなものあるんだよなー」
「え?なんだよ?コロッケとか?」
「それも好きだけど」


とそこで話を切ってにやりと笑いながら米を持っていた手を止めて言った。


「耳かせよ耳」
「なんだよ、なんか悪い顔してんぞ」


今思えばあいつの顔は少し緊張していた気がする。

が、あの時はさして考えもせずにあの時は気になった心のままに顔寄せた。

寄せると出水も顔を寄せてきて小さめの声で囁いた。


「お前だよ、お前」
「…え」


驚いて出水を見ると、

「恋愛的な意味でな」って少し赤い顔で伝えてくるので今まで意識したことなかったけどなんだか可愛くて、ほんとなら罰ゲームなんじゃねーのとかギャグのつもりなんじゃないか、とか出てくるはずなんだが。

出水とならと思ってしまったわけで。




俺も思わずうなずいて

「俺もからあげよりも好きかも」

とか言っちゃったので相変わらず一緒にはいる俺たちの関係が少し変わったのだ。












「みょうじ」


どのくらいボーとしていたのか声をかけられた。


「なにボーとしてんだよ」
「…出水」
「告白かよ?」
「まあ…かわいい恋人がいるものでお断りさせてもらったよ」


少し不安そうな目をしながら、それを隠そうとニヤニヤしながら茶化してくる、ので俺も出水に合わせて言葉を返すと出水の顔がじわじわと耳まで赤くなっていく。


「そーかよっ!かばん持ってきてうやったからかえろうぜ」
「顔が赤いですよ、出水さーん」
「うっせー!」
「ちょ、かばん投げんなよ!」
「持ってきてやったんだから感謝しろよ」
「はいはい、さんきゅー」
「分かればいい」


なんていって満足そうに笑っている姿がさっきの彼女よりもかわいいし、こういう会話をしているのが楽しいのやっぱり好きだなと思って笑った。


「お前なに笑ってんだよっ」
「なんでもねーよ!」
「なんだよ!」
「それよりもかえろーぜ、出水!」
「あ、ちょっと待てよ!みょうじ!!」



2015.1231


   end 

 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -