なんとかならないものだろうか。
毎度毎度飽きもせず、そして懲りもせず。
昼休みになってものの数秒、何処からともなく湧き出た女子共に囲まれている。

「佐伯くん!今日は私達とのお昼だったよねっ!」
「違うよ〜? 私達とだったよねぇ?」
「ほっ、ほら、喧嘩とかしないで。みんなで食べたらいいんじゃないかなっ?」

まったく、いつ何処で誰が約束なんてしたんだよ!
言えない言葉を飲み込んで、心にもない事を笑顔と共に吐き出す。
毎度の事だが、自分で自分の首を絞めてるんだよな、俺。
言った傍から後悔して視線を外すと、廊下からにょっきりと出た白い手が『こっち、こっち』と手招きする。

―――なにやってるんだ?あいつ。

それだけでもすぐ分かる、その手の持ち主。

「えっと。購買でパン買ってくるから、先に行っててくれないかな?屋上、でいいよね?」
「うん。先に行って待ってるから、早く来てね〜!」

じゃあ。と片手を上げ、慌てて廊下に出るとすでに手の持ち主の姿はない。

―――いったい、なんなんだ?

頭に疑問符を浮かべつつ、とりあえず階段へ向かうと、3階の踊り場から腕がにょきっと突き出され、ひらひらと動く掌が『こっち、こっち』と手招きする。

―――またバカな事でも思い付いたのか?

辺りを見渡し、誰も俺を気にしていない事を確認して、何気なく用もない階段を上る。

「瑛くん、おっそーい!」

紙袋を持った左手を腰に当て、3階の入り口に立つあかり。

「遅いって、あれじゃ分かんないだろ。」

最後の一段を上がりながら、手刀を繰り出すと、額に当たる直前あかりが受け止めニヤリと笑う。

「ふっふーん。残念でした。今日の瑛くんは甘いんじゃない?」
「甘いんじゃなくて疲れてるの。」
「あー。例の彼女達でしょ? では、そんな疲れた瑛くんを癒してあげよう。」

『感謝してよねー。』と、さっき受け止めた手をそのまま引っ張り、人気の無い廊下を先に歩く。

「なぁ。どこへ行くんだ?このまま行ったってさ…。」

そう、このまま進んだって使われていない、しかも鍵が掛かった教室やら、滅多に足を踏み入れないなんかの資料室やら。
とにかく入れない所ばかりだ。
歩みを進めるあかりの背に向かって問いかけると、首だけ振り返ってふふんと鼻で笑う。しかも得意げに。
こういう時のあかりは、なにかある。絶対、に。
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