「……本当に誰も来てないのか?」
「あははは。なんか勘繰ってる!」
「当たり前だろ!なんにもないのに使わせる奴が何処にいるんだよ!」
「それが居るんだよ。あれかなぁ?給水塔の上で昼寝して落ちかけたから、かな?」
「おっ、お前、そんな事があったのか!?」

『それとも、渡り廊下の屋根で寝てたのバレたからかなぁ?…それとも…』と首を捻りながら、誰がその現場を見ても青くなりそうな事をブツブツと呟く。
たしかにあかりはよく授業をサボっている。
それでも成績は上位だし運動も出来る。
その上美人タイプだが、鼻に掛けないから男女関係なく人気がある。
今日のあかり好みのパンの数々も、おそらく貢物だろう。
そんなあかりに欠点があるとすれば、この自由奔放さ。
周りに合わせる事もなく我が道を行く。
良くいえばさっぱり、悪くいえばざっくり。自由奔放、唯我独尊。
見た目は女らしいが、中身は男。そこらの男じゃ歯が立たない。

「ま、そんな感じでね?寝るならここにしろって。ほっとくと警察沙汰になりそうだからって。」
「けっ、警察沙汰!?」
「うん。変なとこで寝てるのを一般の人に見られて通報でもされたら――、なんだって。」

確かにそれはヤバイね。と、人事のようにカラカラと笑う。

―――俺、なんでこんな女が好きなんだろ?

子供の頃会った時は、なんだか女の子らしいふわふわとした感じで一目で好きになって、また再会した時はすごく女らしくなっててまた好きになって。
なのに、あかりを知れば知るほど自分の中の理想とはまったく違うって思う。
あの頃の綿菓子みたいなふわふわとした思い出が、ガラガラと音を立てて崩れて。
こんな男らしい性格の女はタイプじゃないって思うのに、傍にいると安心する俺っていったいなんなんだ?

「おや?瑛くん、お疲れ?」
「お前が俺を疲れさせてるんだ!」

すっかり昼ご飯を食べ終わったあかりが、紙パックのカフェオレのストローを咥えながら覗き込む。

―――誰が俺を疲れさせてるんだよ!

最後の一口を口に投げ入れ、あかりのカフェオレを横取りして流し込む。
さっきまでは、取り巻く女子に疲れてたけど、今はあかりの突拍子もない行動と言動に疲れてるんだと思う。絶対に。

「でもさー、ここなら便利じゃない?」
「……なにが?」
「ここは内緒なんだから、こうやってても誰にもバレないんだし。」
「……まぁ、そうだな。でも、バラすなって言われてるんだろ?」
「そんなの分かんないって。別に見に来るわけじゃないし。」

あっさりと口にすると、上履きを脱ぎベットに上がる。 
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