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「ここが目的地。本日の瑛くんの癒し場所。」
立ち止まった部屋は、なんだか分からない教室というか、準備室。
中なんて見た事ないし、ここまで来た事も俺はない。
「……ここ、なに?」
「ここはねぇ〜?」
俺の手を解いたあかりが、ポケットからひとつの鍵を出し、何の躊躇いもなく差し込み開ける。
ガラリと勢いよく扉を開き先に入ったあかりに続くと、入り口のついたての奥に校長室にでもありそうなソファーだの、なぜか立ててある長机だの、その先には学校に必要なのか簡易ベットだの。
「簡単に言っちゃえば、使わなくなった物を放り込んである倉庫?みたいな感じなんだけどぉ。」
声を弾ませそう話すと、簡易ベットにドサリと腰掛けて隣に座れとばかりにポンポンと叩く。
不思議な事に、倉庫という割りには空気が澄んでて埃っぽくない。
ベットに敷かれたシーツや畳まれた薄手の掛け布団は綺麗だし。それに、入り口のついたてと変に立て掛けられた長机で、まったく廊下は見えないし。
「倉庫、って感じしないな。なんだか人の気配があるっていうか……。」
「あ、そうだろうねぇ?」
俺がつい洩らした疑問にも驚く事なく、ベットの隣に何故かある折りたたみのテーブルを慣れた手つきで取り出し、その上で紙袋の中身を開ける。
出てきたのは、カレーパンだのサンドウィッチだの、この学校で人気のあるパンばかり。
「なんか凄いな。よくそんなに買えたな。」
「まぁ、いろいろね。うん。」
「また誰か使ったのか?…って、もしかしてここも!?」
「あー、まぁね。なんというか……我が家?みたいな?」
話によると、所構わず昼寝するあかりを見かねたある人物がここを提供してくれたらしい。
ある人物とはトップシークレットだから言えないんだけど、とカラカラ笑いながら話す。
「我が家って!他にもこうやって来てるのか?」
「まさか。そんな事したら大騒ぎになるでしょ?バレないようにって言われてるしね。はい、瑛くんの好きなカレーパン、どうぞ?」
「あ、サンキュー。じゃなくて!」
「あははは。瑛くん驚いてる。」
当たり前だろ!学校を自分の部屋みたいに使う奴なんて聞いた事もないし、それを使わせてるのがどう考えても力のある人物、つまり校長とか教頭以外に考えられないんだから!
…もしかして、そのある人物とやらはここに来てるんじゃないか?
つーか、あかりを狙ってる?