*慌てて離した手*

右の頬にぽつり。左の頬にまたぽつり。

大きな雨粒のようなそれはとても暖かく、私の頬に落ちては涙のように髪に伝う。なにも考えられない熱の中でそっと、でも薄く瞼を開けてそれを拭おうかと右手を動かしかけて、躊躇して止まった。

「………ッ…!…あかり…イク、ぞ…ッ…?」
「……ぃ……ッ…。…ん……んっ…!」

微かに聞こえる波の音が響く夕日色の部屋の中、それ以外に聞こえるのはギシギシと軋むベットのスプリングの音とお互いの息遣い。

その涙のような雫を落とす人物は私を組み伏せ、額から流れる汗を拭う事もなく快楽に耐えるかのように眉を寄せ、解放の瞬間(とき)を告げた。

「…………く、ッ………!!」
「………ん、っ……!」

受け入れた自分の身体の中で質量を増すのが分かる。

そしてそれが薄い膜の中に熱いものを吐き出すのも……なにか別の生き物のように脈打つのすらも……。

差し込む光で輝き熱の引いた穏やかな風に柔らかく髪を揺らせながら私に背を向け、すべての行為を終わらせようとしている。

服を着ている時には分からない日に焼けて引き締まった背中。今まで私が知らなかった異性の身体。

つい魅入ってしまう自分に気付き、その背中に気付かれぬよう包まる布団を引き上げ顔を隠す。
それでも全てを隠す事は出来なくて目だけを出し、柔らかく不規則に揺れる色素の薄い独特な髪を見つめ続けた。

「………ふぅ……。もう秋だけど…さすがに暑いな?………って。おまえさ、そんなに巻き付けて暑くないのか?」
「だっ……だいじょうぶ!暑くない…事はないけど、…だっ、だめ!引っ張らないで!見えちゃう!」
「いまさら、だろ。変な奴だな。シャワー浴びる時間はないんだから、ちょっとくらい汗引かせた方が―――」
「ほっ…ほんとにだいじょうぶだから!て、瑛くん、用意があるんでしょ?ほら!髪とか、髪とか、髪とかっ!」

不意に揺れた背中が振り返り、私の格好を見て目を丸くする。四つん這いで近付き布団を下げようとする彼の身体がまる見えで、恥ずかしさのあまり顔を隠し引き下ろす手に抵抗したまま叫んだ。

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