*じゃあ、奪ってあげる*

日々疲れる学校生活の中で唯一安らぐ時間は昼休みで。

とりあえず旅行が終わるまでは騒がしいに違いないから、と針谷を口実に逃れる毎日。

今日は購買のパンをかじりながら音楽室を貸し切って、悲壮感漂うあかりの顔を眺めている。

それは昨日の出来事。口止め料に何か奢れとウルサイ針谷をかわしつつ辿り着いた下駄箱でちょうど銅像のように固まったあかりと遭遇して……。

「どうしたー?あかり。校庭のおっさんにでもなったかー?」
「…あ、ハリーに瑛くん…。どうしよう…。瑛くんと間違えてるんだよね、これ。」

下駄箱を恐る恐る指差すあかりに、何の事だと二人で覗き込む。
それは間違いなくあかりの下駄箱で、中にはぎっちりと詰め込まれた……。

「……手紙…?」
「瑛くん!これは瑛くんのなんだから責任取って持って帰って!取り巻きさん達が怖くて私は出せないよ!」

何とかしてよと言わんばかりの必死の形相で俺を揺さぶるあかりだけど…これはどう考えても……。

「ぶははは!バカだなー。あかり。これは佐伯のじゃなくてオマエの。いまさら下駄箱間違うわけなんかねぇだろ?」
「えええっ!?そんな事あるわけないよ!今まで一度もこんな事なかったんだよ!?」
「ぶくくく。だからー、みんな勝負賭けて来たって事なんじゃねぇの?ホラ、抜かなきゃ帰れねぇぞ?」

オタオタと動揺を隠せないあかりを手伝って下駄箱から手紙を引き抜く。

さすが配慮なんて言葉に縁がないらしい男子共は、ぎっちりと隙間なく詰め込んでいてあかりの力じゃ到底引き抜く事が出来ない。

別れ際まで茫然自失だったあかりだけど…。
どうやら今日もそれを引きずっている…というより、またも下駄箱にラブレターが詰め込まれていたらしい。
それは喜びではなく恐怖すら覚えるとあかりの顔が物語っている。

「でー?昨日の分はどうしたんだー?」
「昨日のは…名前が分かる人のは書いたよ?お返事。…分からない人のも一応書いたけど。」

ほとんど徹夜だったのだろうか。疲れ切り、おまけに目の下にクマまで作っているあかり。
そして目の前にある机の上には手紙の束。

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