*僕だって恋くらいする*

「………あの、さ………。」
「珊瑚礁ブレンド上がりましたよ?それとこちらがブラジルブレンドのケーキセット2つ。二人とも、お願いしますね?」
「はい!それじゃあ…え、と…私、2番テーブルに行きますね!」

待機するあかりに話すきっかけを作ろうと声をかけながらと近付くと、カウンターに並ぶコーヒーカップ。

二つのテーブルをちらと見比べたあかりが抱えていたトレイに手際よく乗せるのは読書をしているサラリーマン風の男性客のコーヒー。

もう一つはOL風の女性客達が注文したもの。注文時、俺に色々聞いていたからなのか、行くべきなのは俺と判断したらしい。

さっきからタイミングを見計らって話しかけるものの、すり抜けるように距離を置くあかりに文句を言いたい気持ちでいっぱいだけれど、仕事中だからと堪えながら脇に抱えたトレイにカップを並べ、一つ息を吐いて店用の顔を作りテーブルへと向かった。

少し早めに落とす照明としまう看板。早々と、サイフォンを手入れし始めるじいちゃんの意図を理解したあかりがすまなさそうに、頭を何度も下げくるくると動き回り片付けを始める。

適度な所で切り上げさせ着替えを促すと、また一つ頭を下げ更衣室がわりにしている部屋に入るのを見届けてから、じいちゃんに向き直った。

「やっぱり送ってくよ。これだけ早かったら歩いても大丈夫だろうし。着替えて来るから引き止めておいて?」

残った片付けは戻ってからにすればいいなんて着替えに戻った結果がこうだ。

店で顔を突き合わせていたらなんとかなるんじゃないか、ちゃんと話す時間も出来るんじゃないかと思っていたのに、ここまで徹底的に避けられるなんて。

「………話くらい…聞いてくれてもいいだろ…っ…!」

苛立つ気持ちを抑える事が出来ず、もう一度窓枠を叩いたのだった。

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