*平行線を辿る日々*

「―――本当に来ない?絶対に?」
「しつけぇぞ?来ねぇ、っつーたら来ねぇの。アー……っと、オマエはそっ……いや、こっちだな。こっちに座れ。」
「どっ、どうして?って言うか…いつもの席じゃ……。」
「いーんだよ、ここで。視覚的にバッ……。は、いいとして。ホレ、座れって。」

約束した次の日、恐る恐る音楽室に行くとハリーの言葉通り瑛くんの姿はなく、それに席も真ん中で少し前の方。何かを気にしながら忙しなくあっちだこっちだと席に腰を下ろすハリーの満足そうな『ここ』に促され、どうしてと疑問を投げかけながら席につく。
くると回り込んだハリーが目の前の席に斜めに腰を下ろし、頬杖をついた。

「……なんか変だよ?今日のハリー…。いったいどうした―――。」
「あ、イテっ!!」
「えっ!?」

突然左目を掌で押さえ、俯くハリーに驚き二人の間にある机に両手をついて前屈みになり覗き込む。
目を隠したまま顔を上げたハリーの顔が痛そうに見えて、思わず手首を掴んだ。

「どっ、どうしたのっ!?目がどうしたのっ!?」
「……ッ。……なんか入ったみてぇだ…。悪ぃ、ちょっと見てくれっか?」
「当たり前だよ。ほら、手、離してみて?」

痛そうに顔を歪ませるハリーの目から掌を外し、少しだけ顔を近付け異物を見つけようとじっと見つめるものの、それらしいものはない。

「…………んー……、それっぽいものはないんだけどなぁ……、どこだろう…?」
「んなわけないだろ、すげー痛ぇんだし…。あ、もちっと近くで見てくれよ。」
「あ、うん。えー………っと。んー……?……ハリー……やっぱり―――。」
「―――――あ。取れたみてぇだ。」

いつの間にか後頭部に伸びた手でぐいと引き寄せられ、近くなったハリーの顔に指を伸ばし下瞼を少しだけ押し目の中にあるはずの何かを探す。見やすいようにか、黒目をキョロキョロと動かすハリーの目はちょっとだけ怖い。と、思うと同時に頭に触れていた掌がパッと離された。

「えっ!?そうなの?よかったね!」
「ああ、オマエの鼻息で吹き飛んだんじゃねぇか?すげぇな!」
「ひどっ!鼻息なんて吹き掛けてないもん!」
「オマエ…気付かねぇのか?今の鼻息すげぇぞ。っつーか、やっぱりここは日当たり悪ぃから寒いな。いつものとこでメシ食おうぜ?」
「ちょっ!そんなすごい鼻息なんてしてないってば!」

なぜかニヤニヤとするハリーがわざとらしいくらい身震いして席を立ち、日当たりのいい窓際の席に移って行くのを、今のはなんだったんだろうと僅かに思いながらも慌てて後ろを追ったのだった。

平行線を辿る日々
END

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