*平行線を辿る日々*

瑛くんがどうしてあんな会話をしてたのか理由は分からない。でも、男の子であるハリーに話すのは恥ずかしくて、一人の男の子が言った事だけ…他はかい摘まんで聞かせた。

「…ふーん。そういや何とかするとか言ってたか、アイツ。そういう事か。」
「…なんとか?」
「あ、いや。それはこっちのハナシ。で?佐伯に年上の女がいたとして、なんであかりが佐伯を避けないといけねぇんだ?関係ねぇだろーが。」
「そ、それは……。だっ、だって、万が一、その彼女さん?に見られたりしたら、変な誤解を招くでしょ?私はただの友達なんだか……。」

缶ジュースを口に付けたまま『ふーん』とくぐもった声で妙に納得したハリーが、私をじっと見つめる。その目がなんとなく見透かされてるような気がして目を逸らし、何気ないふりでお弁当を片付けながら言葉を濁す。

「でもよ、まず学校でなんか会わねぇよな?」
「だっ、だから。万が一だってば。それに、ダメなの!これ以上瑛くんの傍にはいられないの!」
「………オマエさぁ……、ホントにいると思ってんのか?」
「……じゃないと…ありえないもん…。」

―――そう。それなら最初からつじつまが合う。今まで本当にただの友達としての関係だったのが、急にそんな事になったのも。

きっとその年上の彼女さんとかと喧嘩したとかで、ちょっと目についた私と浮気したとか……。最近の瑛くんって様子がおかしかったもの。変に態度が深刻だったり、なんか悩んでるみたいに考え事してたり。

他人に話してみると今までの事が冷静に思い出されるものなのか、新学期に入ってからの瑛くんの変化を一つずつ思い起こして溜め息をついた。

「ハリーが心配してくれるのは嬉しいんだけど、やっぱり一緒にはいない方がいいと思うの。瑛くんのためにも。だから―――。」

この数日間、見た事もない彼女さんの事を考えて、それでもいいとか上手くいってないならとか思い付く事もなく、ただ逃げ回ってた私には瑛くんを好きでいる資格なんてきっとない。

それ以前に、瑛くんがその人よりも私の事をという事がまずありえなさすぎて、これ以上傍にいて自分の気持ちがバレる事の方が怖い気がした。

今ならまだ、時間が経てばこれまでの立ち位置に戻れるかもしれな―――。

「………ま、オマエには、もうちっと時間―――っつーか、色々必要だな?明日、昼休みに音楽室に来いよ?佐伯はちゃーんと追っ払ってやるからよ?いいな?」

予鈴の音に立ち上がりながら言いかけ、自分の未練がましい汚い考えと、ハリーにたいしての綺麗事に愕然とし思わず口を閉じる。

それを知ってか知らずか、私の後に立ち上がったハリーがポンと頭を叩いて校舎に戻っていく。

自分の中にあるどす黒い感情とハリーの謎の言葉に戸惑い、後ろ姿を見送ったまま暫くの間そこに立ち尽くしたのだった。

prev next

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -