*平行線を辿る日々*

もうこんな事を何日続けているのだろう。
目立たないように誰かの後に教室に入り、周りの席の友達にだけ声をかけ、休み時間は瑛くん信者じゃない子達の中で過ごし、昼休みは出来るだけ瑛くんが通らない場所を選んでお昼を食べる。

一番前の席だと振り返るだけで視線が合いそうで少しも気が休まる事はないし、学校生活じたいちっとも楽しいものじゃない。

まだたったの数日だからきっと苦しいんだ、いつか自然にクラスメートの一人として顔を合わせても平気になれるはず、と自分に言い聞かせながら、それでも硬くなる顔を隠し切れないまま次の授業のために席を立つ。

瑛くんは他の女の子達に連れられ早々と教室を出ていたから顔をつき合わせて慌てることはない。少しホッとして廊下をゆっくりと進むと、隣の教室の窓がガラリと開き、見慣れた顔がひょっこりと突き出された。

「おら、なーに携帯の電源切ってるんだよ。」
「…わ。…びっくりした…。」
「びっくり、じゃねぇよ。オマエ、アドレスも変えてるだろ。」
「う、うん…ちょっと、ね…?」
「なんで教えねぇんだ。」
「え、と…。それもちょっと…かな?」
「だぁー!ラチあかねぇっつーの!……昼休み付き合え。」
「えぇっ!?で、でもっ。」

ハリーが言う付き合えはきっと音楽室の事で…。瑛くんだって今はハリーとお昼を一緒に過ごしているから、私は避けていたのだし。でも、ハリーはそんな事知らないし、言ってもいないし。少しはおかしいとは思っているんだろうけど、誰かに相談出来る事でもない、それが男の子であるハリーなら尚更だ。

「場所は変えてやるから、ちっとは付き合え。アイツにも言わねぇ。いいな?」
「えっ?」
「バーカ、隠してるつもりなんだろうがバレバレなんだよ。ここんとこオマエが隠れてた場所…どこだ?」
「た、体育館裏…。」
「ふーん、そんなとこにいやがったのか…。まあいいや。ホレ、次の授業があんだろ?行った行った。」

言い澱み言葉を探す私に業を煮やしたのか、それともすでに何かを知っているのか、思いがけない言葉を紡ぐハリーについ本当の事を漏らし、あれよあれよと言う間に昼休みの予定が決まっていた。

頭が付いていかない私を置いて、話は終わったとばかりに追い返すようにハリーは手の甲をひらひらと振ってピシャと窓を閉めたのだった。

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