*こんなの不条理だ!*

「頼むよ、佐伯ーー!もうすぐ修学旅行だろ?どうやったらOK貰えるか教えてくれよー!」
「ちょ、ちょっと!そんな事僕に聞かれても!」

いったい何なんだ!って言うか、恋愛の極意ってどういう意味なんだよ!
俺に聞かれても知るわけないだろうが!

「頼むよー!」「お前しかいないんだよー!」「プリンスなんだろー!」などと、それぞれが好き勝手な事を口にし、すがりつく男達に立ち上がって蹴り飛ばしたい衝動を抑えながら必死に優等生の仮面を被り続ける。

「あっ、あのね?そういう事は、僕の意見じゃ参考にならないと思うから。」

まぁまぁと言わんばかりに両手を胸の前にかざし、すがり付き必死な表情の男子達をなだめる。

「なんでだよー!」だの「勿体ぶらないで教えてくれよー!」と、涙目で必死なこいつらは聞いてはくれないが、俺としても必死だ。そして本音だ。

―――そう、たぶん……というか、絶対に俺の意見は参考にならない。

何故なら生まれてこのかた告白なんてした事がない。
いや、ない事はないはずなのだが、その辺りの記憶は曖昧だ。
正確に言えば、記憶が残ってる小中、そして高校2年の今に至るまで告白以前に誰かを好きになった事がない。

もともと自分の領域に誰かを入れた事―――。

…そういえば例外中の例外、たった一人だけいた。

ちらりと廊下側の一番前。
俺の席とちょうど対角線上の席でクラスの男子と話す一人の女子に目を向ける。
最悪の出会いから俺の事がバレて、それで何となく話すようになって、何となく同じ時間を共にするようになった少女。
異性という感情はないけれど、傍にいると気が楽で自分を作らなくていい相手。

まぁ、あいつは今の状況にまったく関係ないんだけど。

「おい。聞いているのかよ?佐伯!」
「―――えっ!?」

笑ってるらしいあかりの揺れる背中を見つめていると、不意に肩を掴まれ我に返る。

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