*平行線を辿る日々*

…今日はどこに行こうかな……。

別に教室でご飯を食べてもいいし友達と一緒だっていいんだけど、誰もいないところで一人過ごしたくて出来るだけ知り合いがいない場所を探して、今日も昼休みを告げるベルと同時にお弁当片手に校舎内をうろうろとしている。

―――そういえば、体育館の裏の方に日当たりのいい場所があったっけ?

この時間ならコンクリートの部分が陽だまりになっていて、扉さえ閉められていたら休み時間に体育館で遊んでる生徒にも気付かれずゆっくり出来る。

床を跳ねるボールの音や笑い声なんかを気にしなかったら、なんだけど…それくらいなら我慢できるかな、と階段の手摺りを捕まりながら駆け下りた。

……うん。やっぱりうるさい…ね。

もそもそとお弁当を食べ始めてすぐ始まるバスケットなのかボールをつく音に、もともとなかった食欲が余計になくなり蓋を閉めそっと鉄の扉に背を預けた。

扉の中から聞こえてくる笑い声を背中に感じながら、袋の中の携帯とお弁当箱を取り替える。手の中に残った折りたたみの携帯をカチと音を立てさせ開き、真っ暗な画面を見つめた。

瑛くんと別れた後すぐに鳴った着信音。どうしたらいいか分からなくて、ただ名前が浮き出るディスプレイを眺めていた。
途切れた瞬間は取ればよかったと思う反面ホッともして、閉じようとした瞬間また鳴り響いて吃驚した。

……なにを話されるのか、瑛くんの口からはっきりと聞かされるのかもしれない、私との事を後悔して謝られるかもしれない。

自分が拒否したくせに決定的な言葉を聞くのが怖くて、どうしても聞きたくなくて、入るメールを開けずにアドレスも変えて携帯の電源を落として、家にかかってきた電話すら取らなかった。

ここまでしたらきっと呆れて……ううん、嫌われてるよね。どう考えたって嫌な子だもの。

もう今更掛かってなんてこないんだろうけど、それすらも確認する事が違う意味で怖かった。

傍にはいられないなんて言ったくせに、僅かな接点とか繋がりとか……断ち切る事が出来ない。

やっぱり、瑛くんの事が好きなんだもの。たとえ届かなくても、遠くでいいから見つめていたい。…こうやって避けるように過ごしている矛盾は分かってるけれど。

電源を戻してみようか、とボタンに指を掛けながらやっぱり勇気が出なくて溜め息をつくと、静かに折り畳んだのだった。

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