*平行線を辿る日々*
カーテンの隙間から漏れる光が瞼の中まで差し込み、浅く漂う意識を覚醒させる。重い瞼を開き、力の入らない身体を無理矢理起こした。
「あたま……いた…。」
ズキズキと脈打つように締め付けるこめかみを押さえながら部屋を出て、洗面台の鏡の前に立つ。
「……うわ…ぁ…。髪、ボサボサ…すごいかも。」
面倒がって髪も乾かさず眠ったせいであちこちに跳ね、ちょっとやそっとじゃ直らない程のボサボサ頭の私がそこにいた。
「……ぶさいく。………最初から可愛くなんてないけど。…シャワー浴びよ。」
寝不足のせいかクマも出来た生気のない鏡の中の自分に握った拳で殴るマネをして、脱衣所の扉を開けた。
「あかり?あなた、コーヒーだったわよね?」
「………紅茶がいい。面倒ならミルクでいい。」
「あら、珍しい。いつもはコーヒーじゃないと嫌って言うのに。」
「そんな気分じゃないの。…いい、自分でするから。」
身仕度を整えキッチンに入るとやかんを手にするママの声に俯いたまま答える。やけにのんびりとした声が気分を苛立たせ、当たり散らしそうになるのを堪えて冷蔵庫を開けた。
本当に、誰のせいでもない。私が勝手に傷付いて、自分の気持ちを持て余してるだけ。
……違う。自分の気持ちが届かない事くらい、好きって気付いた時から分かってるんだから、傷付く事さえもおかしい。
断ろうと思えば断れたはず。それをしなかったのは私自身。そうしてたら独占出来るなんて、汚い事を思ってた私への罰なんだ、きっと。
それでもざわつく心を抑える事は出来ず、取り出した牛乳パックから冷えたミルクをグラスに注ぐと出した場所に戻し、乱暴に扉を閉めたのだった。