*世界はいとも簡単に*

「―――だからね?君の…と言うか、君達に共通してるんだろうけど…女子の身体って凄くデリケートなんだ。まず手は清潔に…あと、爪も切って。それと、切りっぱなしじゃなくて角を取る事。順序…と言うか…そういうのは分かってるみたいだから省くけど、とにかく優しく少しでも痛くしないように。」

差し出された無数の掌の中から、最初に出せと言った奴の手首を左手で持つと掌を俺の前に引っ張り右手の中指をトンと乗せる。

「―――こうやって、指の腹を使って……柔らかい粘膜みたいなものだから…力を入れずに……反対に入れない方がいいんだよ。…………これで分かった、かな?」
「……う………うわー!な、なんか、すげー擽ったい!!」
「ちょ!どんな感じなんだよ!」
「こっ…こんな…?これくらいだった!佐伯の指!」

バカな頭でも分かりやすくと、ゆっくりと説明しながらそれらしく指先を動かし伝わせる。
力加減が擽ったかったのか身震いしたバカが興奮しながら叫ぶと、我も我もとそいつに掌を差し出し俺をそっちのけで盛り上がり始め、何とか誤魔化せたらしいと内心安堵した。

「なるほど…、そうやってするんだ。さすが、モテるだけの事はあるって言うか…、やっぱり俺達とは違うよな?」
「……どういう、意味?」
「だから、あれだろ?佐伯の彼女って年上なんだろ?それなら学校の女子に興味ないのも頷けるよなー。」
「は?そんな―――。」

そんなバカな事あるもんか。と、反論しようと目の前で神妙に頷くスポーツマンAに口を開きかけると、ガタリと大きな音がするから驚いて扉に顔を向け、目を大きく見開き立ちすくむあかりと視線が絡まった。

「…………あ、ごめん、なさい。えっ、と…鞄取りに……。あ、すぐ帰るから…気にしないでね?」

一斉に口を閉じ視線を浴びせる男子生徒に遠慮がちな笑顔を向け、先程たてた音の原因だったらしい扉から手を離してぎこちなく机の間をすり抜け、席へと戻るあかり。
その横顔は強張っていて、どの辺りからかは分からないが、話は聞かれていたのだとはっきりと分かった。

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