*世界はいとも簡単に*

「―――それで…僕に聞きたい事ってなんだったかな?あまりゆっくりとはしていられないから、手短にすませてくれると助かるんだけど…。」
「あ、そういえば、佐伯ってどっかの進学塾かなんかに通ってるんだっけ?」
「まあ……そんな感じ、かな?」

どこかの女子生徒からでも小耳に挟んだのだろうか、見当外れだけれど口にした事のある言い訳を返され曖昧に笑みを返す。

『とにかく時間がない』と最初に釘を刺すと、妙に神妙な顔をして面々が頷きシンと静まり返る。縋るような期待に満ちた眼差しが突き刺さり、やっぱりマズイと表情を固まらせた。

「―――でな?次はこうだろ?」
「……いや、たぶんそうやったら力が入りすぎてダメだと思う……。」

バカはバカなりになにかで勉強してきたんだろうか。視線をあさっての方向に上げ、なにかを思い出しながらといった感じで身振り手振りその過程を再現してくれる奴らだが、運動部特有の『脳みそまで筋肉』を地でいくような、どうにも見るからに力が入ったデリカシーのカケラもない手つきに、さすがにそれは相手が可哀相だと乾いた苦笑いで制する。

「けっ、経験ないんだから分かるわけないだろ!じゃあ佐伯がやって見せてくれよ!口だけじゃ分からないんだから!」
「えっ?今、ここ……で?そんな事……言われても……。」

なんで、俺がそんなバカみたいな事、やらなきゃならないんだよ。と、相手が針谷なら突っぱねる事も出来るが、この筋肉バカ共にそれは通用しないだろうし、なにより僕を崩せるはずもなく。

仕方ないと溜め息をつき、赤い顔で息巻いた奴に『掌、出してくれる?』と告げると、呼んでもいない奴らのごつい掌が一斉に目の前に差し出され軽く怯んだ。

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