*慌てて離した手*

「……はぁ……、ご馳走様でした!これ、秋の限定スイーツだよね?きっとお客さんも大喜びだよ?凄く美味しいもん。」
「そっか。まあ…さすが俺、ってとこだよな?」

当たり前とでも言いたそうな顔で私からトレイを手にする瑛くんが、そのまま椅子を滑らせて机に運ぶ。その得意そうな顔が妙に子供っぽく、負けず嫌いな瑛くんを表していて俯きながら小さく笑った。

「…………なに?」
「へっ?なんでもないよ!」
「笑ってただろ。……なに。」
「だっ…だから、なんでもないんだってば。そっ…それより…なっ…?」
「………そんなに慌てる事ないだろ?」

キィという音と共に降り注ぐ声に頭を上げる。いつの間にかちゃんと椅子に座り直した瑛くんがギシと音を立て腰を上げながらベットに膝から乗る。私の身体を両腕で挟むように。

もしかして……もしかするんじゃないかと後退りすると同じように着いて来て、腕と身体がそのスピードに負け後ろに倒れ込んだ。

私の両足を挟み手を着いて見下ろす瑛くんの呆れたような顔に、顔が一瞬で赤くなるのが分かる。割り入れようとする膝に抗う事もなく受け入れるように力が抜け少しずつ開く足に頭の中がぐしゃぐしゃになって混乱する。

本当は、なにが起こるのか分かってるくせに。

覆い被さる瑛くんの唇を待ち、制服を脱がそうと背に回す掌が動きやすいようにと少しだけ浮かせて反らせる。

頭の中では止めなきゃと思っているのに、そうしなきゃと掌で胸元を押しやっているのに、その力は入っていないも同然だし開いた足は膝を曲げて立ち瑛くんを挟んでいる。

受け入れている時のあの引き裂かれる痛みは涙が出るほどで、どうしてこんな事がいいものなんだろうと思うし、あの痛みは恐怖にすら感じるのに、どうして断り切れなくてどうして手助けするように身体を動かしながら脱がされているのだろう。

「………ん、ッ……。」

冷静に考えようとする頭も、肌を滑るように触れる大きな掌と柔らかな唇に徐々に蝕まれていくように纏まらなくなる。

ぎゅっと瞼を閉じていると感覚だけが敏感になり、余計に溺れてしまう気がしてゆっくりと瞳を開けた。

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