*求める事が愚かでも*

「なあ。さっきの話ってどういう意味だ?つーか、誰?」
「……さっき?って、いつ?」
「さっきはさっきだよ。店で言ってただろ。俺もじいちゃん達みたいに―――って。」
「ああ、うん。マスター達とはちょっと違う感じだとは思うんだけど、瑛くんとハリーならきっとずーっといいお友達で―――。」
「はあ!?なんで針谷とそうならなきゃ、つーか、友達とかじゃないし!」

あかりの口から出て来た意外な名前に思わず声を荒げる俺。
たしかに最近は三人でいるし、あかりがいなくても一緒にいる事が多い。ただ、それだってもともとあかりがいたから傍にいるようなもの。あかりという媒体がなければ、話す事なんてさほどないはずだ。

「でも、ハリーと一緒にいると楽しいでしょ?瑛くんだって、いつも楽しそうだよ?」

俺を見上げるあかりの顔が、雲が通り過ぎたのか差し込む月明かりに照らされる。
不思議そうな顔はただ単純に俺に問い掛けているだけのものであったのに、その言葉が俺の思考を一瞬止めた。

――ハリヤトイッショナラタノシイ――?

じゃあ、俺は――?俺といる時、は――?

チクリと刺すような胸の痛み。でも、その答えが分かるはずもなく、なにを口にしていいのか分からないまま一歩を踏み出すとあかりが一歩後退りをした。
さっきよりも光に照らされ、よく見える顔。
泳いだ目が、少し引き攣ったような笑顔が俺を否定している気がして、また一歩足を踏み出す。

「あの……瑛くん……え、と…辞書も貸して貰ったし、宿題の続きしよっか?あまり長居するのも悪いし……。」

「瑛くんだってやりたい事あるでしょ?」と上擦った早口で逃げようと俺を摺り抜け扉へと歩きかけるあかりの手首を掴むと、持っていた辞書が飛び床に落ちて滑る。
床を擦るようなその音に気を取られて視線を追わせたあかりの隙をつき、傍にあるベットに押し倒し乗り上げた。

「―――きゃ――!!てっ、瑛くん!ちょっ!」
「………針谷といた方が楽しいか?」
「へっ?な、なに言ってるの?…じゃなくて!わっ、わざわざこんな事しなくたって、普通に話せば―――!!」

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