*好きかもしれない*

「どうかしたか?」
「あ、ううん。なんかね?ハリーがへんな事言ってたから…。」
「へんな?…なに?」
「なんかね?ハリーと瑛くんを比べてみろって……。」

いったい今の意味はなんだったんだろう。

小さくなり曲がり角に消えるハリーの背中を見送り、瑛くんなら分かるだろうかと何気なく振り向き見上げると、眉間に深いシワを寄せ今までになく不機嫌な顔。

「……あんな右から左へ抜けるバカ頭と俺を比べるなんて、おまえはそれ以上のバカ、だな?この中身はからっぽだな?梅干しの種以下、だな?」
「いたたっ!痛いって!ハリーはそういう意味で言ったんじゃ―――!」

連続チョップから頭を守りながら悲鳴を上げると『じゃあ、どういう意味だよ』とでも言いたげに、腕を振り上げたまま片眉を上げて答えを待つ。その瞳はヘタな答えでも返そうものなら"特大チョップの刑"と告げていて、私はじりじりとカニ歩きをした。

「そ、それは……。」
「それは?……だから……なんだよ?」
「そ、それは……。………瑛くんが分からないんだから、私に分かる訳ないんだもん!」
「あ!ちょっ!言い逃げかよ!?」

どう逃げようかと目を泳がせる私の頭上にそびえる男の子らしい大きな掌が外さないと着いて来て、このままじゃ本当にバカになっちゃうと捨てゼリフを瑛くんに投げ付け、脱兎の如く逃げ出す。

唖然とした顔で固まる瑛くんが意識を取り戻し追いかけてくるまでに少しでも先に逃げなきゃと、顔面蒼白の私は全力で海岸沿いの道を駆け抜けたのだった。

**************

「ブハハハ!!」
「もう!ハリーのバカ!笑い事じゃないんだよ!?」
「ブッ!ワリィ、ワリィ。で?その後はどうなったんだ?」
「………チョップ百連発の刑………。」

日付も変わるという夜更け、携帯を耳に当てて温めのお風呂に浸かりながら楽しくて仕方がないとカラカラ笑うハリーを話相手に、散々チョップされヒリヒリする頭を片手でさする。

結局あれからすぐ追い付かれた私は、鬼の形相をした瑛くんに特大チョップどころか半泣きになるまで連発チョップを頭に受けていた。

「もーーー!ホントに笑い事じゃないよ!ハリーのせいなんだからね!!」

耳から話した携帯に向かって大声を上げ文句を言うと、普段ならそれくらい離していてもよく透るはずの声が何故かピタリと止む。

「……?もしもし?ハリー?どうしたの?お腹でも痛い?」
「バーカ。ちげーよ。オマエさ、もしかして、今風呂に入ってるか?」
「あ、うん。やっぱり分かる?エコーかかってるみたいに反響するよね?お風呂って。」

ハリーにも分かるようにとパシャパシャ湯舟を叩くと、受話器越しに長い長い溜め息が聞こえた。

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