*好きかもしれない*

「おっ、お待たせ!!」
「遅せぇんだよ、オマエは。日誌返しに行くだけで、何時間かかってんだァ?」
「なっ、何時間もかかってないよ!それに、若王子先生が最近どうですかって!じゃなくて痛いってば!」

職員室へと日誌を出しに行き、二人が待つ校門へと辿り着いた途端ハリーに片手で頭を捕まれ悲鳴を上げる。
先生の机に置いてくるだけのはずが、なぜか本人が待っていて世間話で捕まるなんて思ってもなくて。それでも慌てて話を切り上げてきたのに、この仕打ちは酷いと思う。
わしづかみしたまま離してくれないハリーの手首を掴んで文句を言っていると、それまでポケットに両手を突っ込んで壁にもたれていた瑛くんがゆらりと動いた。

「ほら、バカな事やってないで帰るぞ?」
「オイ、佐伯。そのバカってオレ様じゃねぇだろうな?」
「………おまえ以外に誰がいるんだ?」

眉間にシワを寄せたまま近付いた瑛くんの手が、私の頭を掴むハリーの手を振り払いそのまま指先で髪をすくう。
擽ったいんだけど、いつまでも触ってもらいたいような…瑛くんの長い指先が凄く気持ちが……。
髪を解くように指先で梳き続ける瑛くんの顔を見つめ続けると、ふいに顔が俯き瞳が合いそれまでの何気ない表情が怪訝を浮かべたものに変わった。

「……なに?」
「………えっ!?あ!なんでもっ!なんでもないからっ!帰ろっ!暗くなっちゃうから…帰ろ、ねっ!」
「ちょっ、なんだよ、急に。……まぁ、いいけど。」

今、頭に浮かんだ言葉に自分で慌て、瑛くんの指先を振りほどくように思い切り頭と両手を振ると、ますます眉間にシワを寄せ何かを言い出しそうな雰囲気に、誤魔化すように笑顔を浮かべて背中に回り両手で押す。

文句を言いかけ抵抗しようと体重を預ける背中がふっと軽くなり、私の手から離れて先を歩き出すその背中を見つめ、なんだか変な事を思った私への追及がなくなったと分かり安堵の溜め息をつきながら後を追う為に歩き出すと、歩幅を合わせたハリーが隣に並んだ。

「オマエ、自分の事分かってるか?」
「え…?なにが?」
「……は〜。オマエもかよ。……まぁ、いいけどな。とりあえず、オレと佐伯の違いを考えてみろ?意味がわかっから。っと!オレ様はこっちだから。……佐伯!じゃあな!」

ぼそぼそと身を屈めて分からない事を言うハリーが、先を歩く瑛くんの背中に大きな声をかけ途中の曲がり角を曲がる。
また明日、とでも言うように背中を向けたまま手を振る後ろ姿を立ち止まり見送ると、大きな影が覆い被さり顔を上げた。

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