*好きかもしれない*

「……ここ。瑛くんの席だよ?」
「構わねぇだろ。アイツ、もう帰ったみたいだし。ホラ、座れ座れ。で、さっさと終わらせちまぇ。」
「ん〜。いいのかなぁ?勝手に座って。」

瑛くんの前の席の椅子を引き跨ぎながら腰を下ろし、背もたれを抱き抱えながら視線だけで座れと命令するハリーの相変わらずの態度に肩を落として溜め息をつき、仕方なく椅子を引き腰掛けた。

――学校にいる間の瑛くんの視界はこんな感じ、なんだ……。

休み時間に友達と話してると、たまに女の子に囲まれてる爽やか瑛くんと目が合う時があるけど…。

反対から見る風景って、全然違うんだ……。瑛くんはどんな事考えてこの景色を見てるんだ……

「―――いたッ!なっ、なに!?」
「なに?…じゃ、ねぇだろ。なーに、ぼんやりしてるんだ。ホレ、日誌、日誌。」

突然の衝撃に慌てて正面を向くと、伸びるハリーの手。
どうも、こめかみにデコピンをされたらしく人差し指が伸びている。
その指先を見つめムッと眉を寄せて見せても、文句でもあるのかと顎で日誌を指す。

「あ〜。…はいはい。書きますー。今から書きますよ〜。」

早くやらないともう一発、とばかりに指先を曲げるハリーに、不満声をわざとらしくさせ、でも慌てて日誌を開きペンを握り直す。

背もたれに顎を乗せ窓の外を眺めながら鼻歌を歌い始めるハリーは最後まで付き合ってくれるらしく、文句ばかりは言っていられないと気を取り直してペンを走らせた。

サワサワと吹き込んでくるそよ風。瑛くんの席は西日が柔らかく差し込み、風も暖かなまま。瞼を閉じ楽しそうに歌うハリーの横顔がオレンジに染まる。

「……それ……、新曲?聴いた事ないよね?」
「んー?あー、サビだけなんだけどな?この手前はまだ、だな。なかなかいいフレーズが浮かばねぇんだ。」
「ふーん…。曲を作るのって、大変そうだよね?でも、今の曲…凄く素敵だと思うよ?頑張ってね?」
「ああ。サンキュ。……だけどな…頑張るのはオマエ。…まだ終わらねぇのかよ?」
「今始めたばかりじゃない!」

さっきからコロコロと表情を変えるハリーが、今度はジロリと私を睨む。
瑛くんの席に座ってから、まだ10分程しか経っていないと声を上げると、教室の後の扉がガラリと開いた。

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