*不覚にもときめいた*

合わせた唇の想像以上の柔らかさに思わず閉じた瞼の裏側に映る燃えるようなオレンジとそれに反射する小さな輝き。

我に返って瞬きをしたらそれがあかりと重なって見えた。

膝を抱えていたあかりが茫然としながらも確認するように唇を押さえ、俺も今浮かんだ映像を確かめるように頭に浮かべながら立ち上がって…でも、何処か冷静な俺もいて、夏が終わったと再認識させるような燃えカスの花火を片付けていて。

凄い剣幕で怒るあかりの言葉の中に、あの時の事は…あの思い出は残ってないんだって思ったら、何だか無性に腹が立って意味もなく引きずるように連れ込んだ公園の奥、木立の中。暗闇の世界。

身体を使って引き留めたあかりの声が俺の中にある何かを動かして…気付いたら身体も動いて近くにあった木に縫い留めていて。

本当は違うのかもしれない、一番傍にいるから重ねているのかもって頭の何処かで思う俺が投げた質問。

返って来たのは最初に見た映像が現実だったという言葉と頬に触れる柔らかな唇。

伝えるべきなのか…伝えたところでどうなるのか。
少しずつ頭に浮かぶ記憶のページを伝えたところで、何がどうなる事もないのは明白だよな。
そんな事を考える俺がふと気付いたのは、あかりとの過去ではなく、今目の前にいるあかりの姿。

頭の上で両手を上げたあかりの日に焼けていない脇腹が白く浮かび、ずり上がったブラウスが胸元でシワを作る。

俺の腿を挟んだフレアのミニスカートが捲れて見える膝。
少しだけ俺の膝を動かすとそこから覗く白く浮き上がる内腿。

―――たしかに、誰もいないのはちょうどいい。

俯かせた視線を上げちらりと横に向けると、俺の質問に文字通りキョトンとするあかり。
その間の抜けた丸い瞳がハッとしたように見開きオロオロと泳ぎ出す。

理由は簡単。
割り入れた俺の膝がするするとたくし上げるあかりのスカート。
柔らかな腿の感触がジーンズ越しの膝に伝わり密着した下半身を目覚めさせる。

いつもぼんやりのあかりでも、さすがにこの状況がどういう事か理解出来るらしい。

―――そう思われてるなら……まぁ、いいか。

縫い留めた掌に残る柔らかな感触が蘇り……ゆっくりと顔をあかりに向け…何かを言いかけそうに薄く開く唇へと俺の唇を押し当てた。

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