*余裕なんてないくせに*

少しだけ夏の日差しが遠ざかったような高くて薄いベールを被ったような空。
本当の青を隠すその白は、まるで自分を見ているようで…少し心が重くなる。

つい最近までは夏のような日差しで静かだったのが嘘のように昼休みの屋上は生徒達で賑わっている中、数人の女子達と共にある一角でぼんやりと昼を共にする。

うんざりする程の猫撫で声を出来るだけ頭の中に入れないよう、作った笑顔は崩さないよう神経を配りながら購買で買ったサンドウィッチを口に入れながら思考だけを逃避させる。

遠くに見える海は凪いでいて…。
もうちょっと風があると…いい波、来るんだけど。

「ねぇねぇ、佐伯くんってぇ〜。修学旅行の自由行動、海野さんと一緒なのぉ〜?」
「ん?……どうして?」
「だって、この間…一緒に行くって言ってたでしょ?」
「そうだった…かな?海野さん…凄く悩んでたからアドバイスはしたけど…そんな話にはならなかったよ?」
「本当?じゃあ、誰と一緒なのっ!?」

聞いたフリをしながら相槌を打ち意識を目の前にいる女子の背に見える海に傾けていると、いずれ来るだろうと予想していた質問に前もって用意していた答えを口にする。

「それがね?僕、行きたい場所が結構あって。…強行軍になっちゃいそうだから一人で回ろうかと…君達にも何処かで会えるといいね?」
「じゃあ、私達先回りしちゃおうかな〜?佐伯くんは何処に行くの〜?」
「えーっと…哲学の道、とか…。あとは…秘密。会えたらお茶とか出来るといいね?」

人差し指を口元に当てにこりと女子達に笑みを浮かべる。
本当は、強行軍なんてするつもりはないし、哲学の道にも行かないし、ましてやこの女子達とお茶を飲むつもりもない。

『バッカじゃねぇの?そんなのテキトーな場所言って誤魔化ばいいじゃねーか。ぜってぇ行かねぇって場所。…オマエ…案外バカだろ?それくれぇ浮かぶだろ、フツー。』

なんて、あのバカ針谷が言ってたから真似した訳じゃないんだけど…。

「え〜〜!?教えてくれてもいいじゃな〜い。佐伯くんのケチ〜。いいも〜ん。私達、絶対佐伯くんに会っちゃうんだからぁ〜」
「あはは。別にケチな訳じゃないよ?…じゃあ、僕は先に行くね?修学旅行、楽しみにしてるね?」

まるで、目の前に俺がいる事も忘れたように行きそうな場所を相談し始めた女子を置いてその場を後にする。

あのバカが言った通りになってるのは悔しいけど…これ、使えるかも、な。

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