*そんな君は知らない*

……今の間って……なに…?

閉まった扉をしばらく呆然と見つめる。

私、なにかやらかしたんだろうか…?

頭を捻って考えても、思い浮かぶ事はなく。
言われたように座って待っていようと部屋の中を見渡す。
必要な物しか置いてない殺風景な…でも、部屋の雰囲気にあった瑛くんらしい部屋。

……そういえば、男の子の部屋って初めてだよ。

普通ならドキドキしたりするんだろうけど…さっきの瑛くんの表情を思い出すと、何となく嫌なドキドキがする気がした。

―――どうしよう、私。……適当にと言われても…。

勝手に学習机の椅子を使うのは悪いし、かと言ってベットに腰掛けるのは如何なものか。
当たり障りないのはここかなぁ…とベットを背もたれに床に座り込み、改めて部屋を見渡してみると…なんだろう…?不思議な雰囲気。
妙に落ち着くような…あれかな?木に囲まれてるから…かな?

丸みを帯びた天井を見上げていると、カチャリと静かに扉が開く。
取っ手の付いたトレイには2客のカップと淹れたての珈琲の香り。

「…そんなとこに座らなくても…そこに座ってればいいのに。」

両手を塞いでいるためか、顎で差しながらベットに乗り真ん中にトレイを置き胡座をかいた。

「冷めないうちに飲めよ?って言うか、それ、試作品なんだけど…味見してくれないか?」
「もしかして、それの為に?それなら先に言ってくれたらいいのに。じゃあ……お邪魔します。」

こっちに来いとばかりにカップを指差すから仕方なくベットに上がりトレイを挟んで向かい合う形で座る。

…よそ様の、それも初めてお邪魔した部屋でこんな場所に座らされるのは…。
かなり居心地は悪いんだけど、瑛くんの事だから何も考えてないんだろうと気を取り直し『いただきます』とカップを取り口を付ける。

珊瑚礁ブレンドでもブラジルブレンドでもない香りは……。

「やっぱり…香り、キツすぎる、か?」
「う〜ん…ちょっとだけ。もう少し押さえたらいいかも。」
「分かった。サンキュー。」

両手でカップを持つ私の手からひょいと引き抜くと、トレイに乗せ床に置く。

「ちょっ、飲ませてくれるんじゃないの?」
「あれは試作だから。完成したら、な?…あとさ、一つ相談と言うか…あるんだけど。」
「…相談?瑛くんが珍しいね。なに?」
「俺、結構おまえを助けてやったよな?」
「う、うん。そうだね。」

連れ出してくれた時とか…放課後の下駄箱にはお手紙は詰め込まれてなかったから、あの意味深な態度も助けてくれたうちに入るのかもしれない……んだけど…。
さっきから気になるのは瑛くんの体制なのだ。

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