*じゃあ、奪ってあげる*

そして俺の予感が当たったのは次の日、朝から何となくざわつく教室でコソコソと固まった生徒達が俺やあかりに視線を送り顔をつき合せ何事か話している。

あかり自身もその微妙な空気に気付いてか、宛がわれた自由行動の予定を立てる時間に落ち着きなく机に向かっていて…。

やっぱりあいつ…誰かに話したな?

こういう微妙な空気が続くのは見世物みたいでうっとおしいし…。

どうせなら、はっきりあかりを巻き込んだ方が、あのきょどっぷりもなくなるか。

見てる分には面白いあかりの小動物のような行動も、さすがに毎日続くのは可哀相かとチャイムが鳴るちょうど2分前を時計で確認して席を立ち、ゆっくりとあかりの席へ回り込む。

ザワザワと生徒達が見守る中あかりの前に立つと、驚いたように顔を上げた。

「海野さん、って……。自由行動の予定は決まった?」
「え…?ううん。まだ、だけど。」
「そうなんだ?凄くオススメの場所、あるんだけどね?」
「……へっ?」

突然何を言い出すんだとポカンと口を開ける海野と、ざわめく生徒達の声とチャイムの音が同時に響き渡り、『さすが俺、時間ぴったり』と内心にんまりと嫌な笑みを…でも表面上は爽やかな笑顔で駄目押しをする。

「あ、ちょうどお昼だね?じゃあさ、一緒にお昼食べながらその話でもしょう?行こうか。」
「えっ!?あ、ちょ、ちょっと待って!」

机に広げられたノートや京都のガイドブックを手早く纏めて教室を出ると、混乱したあかりが慌てて後に続く。

ピシャリと扉を閉めると中から悲鳴なんだかどよめきなんだかが…教室に響き渡りあかりがびくりと肩を跳ね上げ恐る恐る教室を振り返った。

「ちょっとー!どうするのよー!瑛くん!聞いてるの!?」
「んー、聞いてる。」
「聞いてないじゃない!私明日からどうしたらいいのよー!」
「いいじゃねぇか。これで静かになるんだろうし。別に付き合ってるって公言したわけじゃねぇんだし。」
「よくないっ!ハリーは人事だからそう言えるんだよー!」

その後移動した音楽室でおかんむりのあかりが、廊下を歩いていた俺達の後に聞こえたどよめきで事態を把握して面白がって飛んで来た針谷に八つ当たりをしている。

俺はと言えば、ほぼ確信犯的に騒ぎを起こしたから素知らぬ顔であかりのガイドブックに目を通していた。

さめざめと机に突っ伏し泣き崩れるあかりには悪いんだけど…。
まだ、これからもあるんだよな。俺の画策。
実は夕べじいちゃんと話してた時に思いついてさ。

ホント……ごめんな?

緩みそうになる口元をあかりに見られないようガイドブックで隠しながら、俺の思考は次へと進んでいた。

じゃあ、奪ってあげる
END

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