そう。ホントにありがとうじゃ済まないかも。
あいつが誰にも話さなかったら、あかりへの告白攻撃が止む事はないけど、あいつがちらりとでも誰かに話したら…。
……こんな時期だから、あっという間に広がるだろうな。
「話がある」なんて意味深な言い方したから、俺が告白でもするんじゃないかとか思ってるだろうし。
そうなった場合、あかりが全力否定した方向に向かうわけだけど…。
まぁ、実際付き合うわけじゃないんだから、適当に話を濁しとけば旅行中も静かで俺は安泰なんだよなー。
…悪いけど、あかりには犠牲になってもらうか。
取り巻きの攻撃があかりに向かないようにしてやれば、あかりも文句は言わないだろ。
お互いの周りが静かになるんだからといい方に解釈して口の端を緩める。
「…ねぇ…。瑛くん、気持ち悪いんだけど…。」
「ウルサイ。それが恩人に向かって言う言葉か?敬え、敬え。」
「むー。瑛くんはえらっそうなんだよ。…この度は本当に助かりました。命の恩人様、ありがとうございました。」
「うむ、よきにはからえ。」
立ち止まりブツブツと文句を言いながらも、ペコリと頭を下げおどけるあかりに腰に手を当て胸を張りわざとらしく頷くと、見つめ合ったまま同時に吹き出し誰もいない廊下を歩きだす。
途中出会った女子生徒に連行される時には、小さくガッツポーズをしながら口をパクパクさせ『頑張って』と笑顔を見せていたが…頑張るのはお前だからと内心呆れていた。
だって……。
「…ごめんね?きみの気持ちは嬉しいんだけど…。応えられなくて…本当に、ごめんね?」
悪いけど、あかりと違って慣れてるんだよな…断るの。
こういう事に慣れてるのって…ホントに嫌な気分だけど。
有難いのは、どの女子達もあの男子みたいにしつこくない事。
断られるのが分かっていて告白してくるんだったら止めたらいいのに、とは思うけど、さ。
*じゃあ、奪ってあげる*