*じゃあ、奪ってあげる*

さて。場所は……と。

告白場所なんて限られてるし、と見当をつけながらいくつか頭に浮かべる。

この時間なら、ここが一番ありかと足を踏み入れたのは校舎裏の静かな一角。

大きな木の下に俯きながら立つあかりの前には、またも誰か分からない男子。
身振り手振りで何か必死になっているが、あかりはペコペコと頭を下げどうやら断っているようだ。

―――ったく、相手もしつこすぎ。脈があるかないかぐらいすぐ分かるだろ。

溜め息混じりで頭を掻きながら近付くと、姿勢を正して優等生の仮面を貼り付ける。

「海野さん。こんな所にいたんだ?よかった―――。」
「えっ?てっ……佐伯くん。どうかしたの?」
「うん、ちょっと…話があって。……きみ、彼女を借りてもいいかな?」

いきなり横やりを入れられた男子は目を丸くし、ハッと我に返ったように慌てだす。

「えっ!?でも、俺が先に―――。」
「海野さん?もう、話は終わったんだよね?」
「あ、うん。えっと…。本当にごめんなさい。」
「って事だから…。ごめんね?じゃあ…行こうか。」
「う、うん!」

ポカンと口を開き呆然とする男子を残し歩き出すと、もう一度ふかぶかと頭を下げたあかりが小走りで後に続く。

しばらくそのまま歩いて、人気のない場所まで辿り着くと足を止めて振り返る。

「モタモタしすぎ。断るならスッパリやらないと時間の無駄。」
「だっ、だって、何回ごめんなさいって言っても分かってくれないんだもん!…って、どうしてあそこだって分かったの?それに…。」
「あ?この時間なら、あそこが一番静かなんだよ。それに告白されるのがーって言うのなら、手紙攻撃の次はそれくらいしか思いつかないから。お前がぼんやりしすぎなんだ。」
「う…。そんなにぼんやりしてないんだけどな。でもさすが瑛くんだね!ありがとう!」
「…ありがとうでは済まないかもだけどな?」
「え…?今、なんて?」
「なんでも。…ほら、行くぞ?授業始まる。」

言葉を濁してあかりを急かし校舎へと戻る。

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