食も進まないのか、ぼそぼそと箸を進めるあかりを何となく気の毒に感じながら一番上にある手紙を摘み上げる。
「……瑛くんて凄いよね?毎日こんな感じなんでしょ?私なら耐えられないよ。」
「んー?俺は、手紙に返事はしないからな。こんなには貰わないぞ?」
「でも、いつも追い掛けられてるでしょ?本当に凄いよね…尊敬するよ。」
「……そんな事で尊敬されても嬉しくない。」
ピントのずれたあかりの言葉に苦笑いしてひらひらとその手紙を振る。
「で?この中の誰かと付き合ってみる、とか?そうしたら、この攻撃もなくなるんじゃないのか?」
「そんなわけないでしょ?どんな人かも分からない、好きでもない人となんて…無理だよ。」
「まぁ、それもそうだな。」
それは俺にも言える事で、何となくあかりを自分に重ね二人が同時に溜め息をつく。
旅行さえ済んでしまえばあかりに降りかかる災難は静かになるんだろうけど…でも、今まで牽制を掛けてた男子達がそこそこアプローチを始めるのかも。
―――まぁ、俺には関係ないか。あかりとはただの友達だし。
「オマエら暗すぎ。そんなにイヤだったら、付き合ってる事にすりゃあいいんじゃねぇか。そしたらどっちも静かになるだろ。」
「あー、そっか。普段から一緒にいる事多いし―――。」
「そんな怖い事出来るわけないよ!瑛くんの親衛隊さんって本当に怖いんだよ?無理っ、絶対に無理っ!!」
針谷が何気なく言った言葉に違和感はないかと続けようとした瞬間、あかりが全否定といった感じで両手をバタバタと振る。
「お前な…そこまで否定する事ないだろ。まぁ…確かに後々が面倒か。」
「いっ…た。チョップする事ないでしょー?ホントの事なんだもん。」
涙目で頭を擦りながら膨れっ面をするあかりの前に、チョップの前まで俺が持っていた手紙がひらひらと落ちる。
そのやる気のない気の抜けた落ち方に、疲れが倍増する気がして見つめ合ったままお互いが溜め息をつくと、何処かで携帯のバイブ音らしきものが聞こえた。
*じゃあ、奪ってあげる*