*こんなの不条理だ!*

「昼休み?放課後?」
「え……っと。」
「今日?明日?いつにするんだよーー!」
「そ、それは……。」

今日明日でそんな事答えられる訳はなく言葉を詰まらせた俺は後ずさり、瞳を輝かせた奴らがズンズンと詰め寄る。

トンと何かにぶつかって駄目かもしれないと身体を硬直させる俺の首に何かが回される。

「なーにやってるんだ、佐伯。いつまでも待っても来ねぇから探してみれば…。」
「―――針谷!?……くん。」

少し低い位置から聞こえる不機嫌そうな、でもよく通る声の持ち主。
俺の首に腕を回し肩に顎を置いた針谷が呆れたような声でそいつらに向かう。

「オイ、オマエら。コイツは何かと忙しいんだよ。話なら来週辺りにしといてやれ。」
「あ、ああ。分かった。」
「んじゃ、コイツは貰っとくからな?あ、オマエら、ベラベラ人前で話すんじゃねーぞ?」

「分かったー。」だの「頼んだよー。」だの何だか分からない声援を受けながら、針谷に首をガッチリ固定されその場を後にする。

「…オマエ、バカなんじゃねぇの?」

一言も話さない針谷に連れて来られたのは屋上ではなく、針谷の縄張りである音楽室、そして開口一番のセリフ。

「仕方ないだろ。……つい。」
「つい。じゃねぇだろ。どうすんだ?取り巻き連中でも口説いてみるのか?」
「……それは絶対ヤだ。」
「オマエ、ほんっとにバカだなー。…まぁ、アイツらも相当バカみたいだから、知識詰め込んだら何とかなりそーだけどな。」

いつもと違い、何となく偉そうな針谷が机の上で胡坐をかく。その態度は何処となく余裕が見えて……。

「……もしかして、お前、経験者?」
「ヒミツー。それはオレ様トップシークレット。」
「何だよ、同じなんじゃないか…って、面白がってるだろ。」
「当然だろ?いつもスカしたプリンス様がどうするか、見物だよなー?」
「ウルサイ。あーー、もう!なんでこうなったんだか!今日は厄日だ!こんなの不条理だ!」

ケタケタと笑う針谷の前で頭をガリガリと掻いて当たり散らす。
それでなくても店の事で頭がいっぱいなのに……。
こんな事、いったい何処で知識を手に入れたらいいんだよ。

ひとつ増えた最大の難関を前に、盛大な溜め息をついたのだった。

こんなの不条理だ
END

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