「佐伯だったらそれくらい知ってるんだろ?じゃないとあんなにモテて靡かないなんて有り得ないよなー?すっげー可愛い彼女とかいるんだろー?」
「そんなのいるわけないよ。僕、今はそんな気はない―――。」
「隠さなくったって大丈夫だって。俺達、絶対言わないからさー。もう修学旅行も間近だろ?それまでにはこう彼女が感じるテクニックをモノにしたいんだよなー!」
「ちょっ、ちょっと!きみ達、まさか旅行中にそういう事―――。」
「あったり前だろー?一生に一度の修学旅行だぜ?とびっきりの思い出を作らなきゃ!」
―――いや、それはとびっきりじゃないから。
お前らには例えそうだとしても、相手からしたら最悪な思い出だろ。
自分の部屋とか相手の部屋とかならまだしも、旅行中なんて落ち着いた時間も場所もないんだし。
ましてや、経験もない若葉マークの超初心者。
なに、いきなり上級者みたいな事やろうとしているんだ。
相変わらず金魚みたいに口をぱくぱくさせた俺に怖いくらい真剣な顔をした奴らが詰め寄る。
「な?な?レクチャーしてくれよ。まさか羽学一のプリンスが童貞なんてないだろー?そんなカッコ悪い事なんてないだろー?」
「……………………。」
「…もしかして、めちゃくちゃヘタだから恥ずかしすぎて俺達には言えない…なんて事もないよなー?」
「…………………。」
「佐伯程の奴が、俺達より下って事はないよなー?」
なんだ?この俺の方が勝っている的なモノの言い方は。
勝負なのか―――?
そうか、勝負なら……。
「……そんな事くらい…教えてあげてもいいけど。ただ、秘密にしてくれないと…無理、かな?」
にっこりと、それでいて鼻で笑って上から目線で見下ろす。
例えどんな勝負だろうと負ける訳にはいかない。それがどんな小さい勝負でも。
そう……それが、俺流。
「やったーー!サンキュー、佐伯!じゃあさ、いつにする?」
「…………あ。」
しまった!俺、いったい何を口走ってるんだよ!そんなの…無理に決まってるじゃないか!
*こんなの不条理だ!*