*そして愛に変わるまで*

まだまだ夏を感じる日差しでも、窓から吹き込む海風はだんだんと秋の気配が漂っている。

少し前と同じようにあかりを腕の中に包み込み、まだ夏の掛け布団に二人で包まって火照った身体を冷やしていた。

「……も…動けない…。瑛くん…ひどい…。」
「なんでだよ。愛情表現だろ?」
「明日から修学旅行なんだよ?私…絶対歩けない、朝は電話で起こしてくれないと起きられない、瑛くんのせいだ……。」
「ちょ、待て。たしかにちょっと無理させたけど、途中がおかしかっただろ。」
「おかしくないもん。普通だもん。今日こんなにいっぱいいたら、明日からの修学旅行は寂しくなるんだもん。」

もぞもぞと寝返りを打ち、俺に背を向けるあかりがまた布団を頭まで引き上げながらぶつぶつと呟く。

その声は今までの友達という距離ではなくやけに甘えた声に聞こえ、俺の顔が見えないのをいい事に気付かれないように笑みを漏らす。

なんだかとてつもなく擽ったくて、なんだか嬉しい。

「……瑛くんは女の子…親衛隊の子達と一緒に行動するんでしょ?」
「……はぁっ!?」
「だって、そうでしょ?学校での瑛くんは断らないもん。」

不意にくるりと身体の向きを戻すあかり。
まだニヤついた口元を空いた片手で隠すと、なにを勘違いしたのかムクれたように見つめる。

それは旅行中にある二日間の自由行動の事だと気付き、「冗談じゃない。これまでにそうならないように手を打ってきたんだ」と反論しようとしてふとある人物が頭に浮かんだ。

「なあ、その事なんだけどさ。自由行動一緒に回らないか?せっかくなんだし。」
「…え?そ、そんな事出来るの?」
「なんだよ、一緒に回るのイヤなのかよ。」
「ち、違うの!嬉しいの!…でも、どうやって?親衛隊さんたち…いっぱいだよ?」
「大丈夫。いいカモ……じゃなかった。俺にいい考えがある。まかせろ。」

そう、頭に浮かんだのはおせっかいな赤毛頭。俺をこんなに慌てさせたバツと、こんな時くらい役にたたせてやるっていう親切心。

俺の恋は確かに順序が逆に見えるしあいつだってそう思ってるだろうけど、本当は違う。最初からずっと、あの頃からきっと変わってないんだから。

それは、あかりがあの時の事を思い出したら、だけれど……それまでは俺だけの小さな秘密。それまでは……。

「なあ?せっかくの修学旅行なんだから、思い出、作ろうな?」
「うん!いっぱい、ね?」

窓の外から差し込む海が反射した光りにも負けないくらいのあかりの笑顔に、首筋に差し込んだ腕を引き寄せ、返事の代わりに柔らかな身体を抱きしめ、明日からの二人の思い出作りに胸を馳せたのだった。

は後からついてくる
End.

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